かつては可能だった赤字企業買収による節税ですが、今は行き過ぎた節税を規制するために規定が設けられました。その詳細を無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』著者の現役税理士・今村仁さんが紹介しています。
赤字企業買収(繰越欠損金)適格か非適格かが問題!
■古き良き時代!?
かつては、下記のような節税が可能でした。
1.繰越欠損金や含み損があるペーパーカンパニーをM&Aで買収
↓
2.その会社で儲かる新事業を行う
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3.繰越欠損金等と損益通算を行い、節税を図る
つまりは、赤字会社をM&Aで取得して、その後の利益と相殺し、結果的に税金負担を軽減させることが理論的には可能でした。
■平成18年度税制改正
このような行き過ぎた節税を規制するために、平成18年度税制改正において、下記2つの規定が創設されました。
1.特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)
2.特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入(法人税法60条の3)
「欠損等法人」とは、特定の株主による「特定支配関係」がある内国法人で、欠損金額または評価損資産を有する法人のことです。
「特定支配関係」とは、特定の株主によって50%を超える株式等を直接又は間接に保有される関係で、この特定の株主は、法人株主に限られず個人株主も含まれます。
1については、M&A前に生じた欠損金(赤字)をM&A後の節税に、基本的には使わせないという規定です。
2については、M&A前から所有する含み損のある資産をM&A後に売却などで顕在化させても、基本的には節税効果を発揮させないという規定です。
■「適格合併」欠損金引継ぎが可能な場合も!
一方で、グループ間の合併などでは節税を認めてくれるケースもあります。
代表的なケースが、「完全支配関係のある会社同士での適格合併」です。
この場合の適格要件は、「金銭等不交付要件」と「完全支配関係継続要件」です。
金銭等不交付要件とは、合併の対価として、合併法人やその親会社の株式以外の資産の交付がないことです。
完全支配関係継続要件とは、合併前にあった完全支配関係が、合併後も継続することが求められます。
適格合併であっても、「欠損金の引継ぎ制限要件」も更に確認しないといけないのですが、合併法人の適格合併があった年度開始の日の5年前から支配関係がある場合、この制限は適用されません。
つまり、「5年以上前から完全支配関係のある会社同士での適格合併」であれば、欠損金の引継ぎが可能という事です。
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