中国の自動車産業が、世界展開を狙うためにあの手この手で動いています。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は今回、あのファーウェイが技術提供する長安のハイエンド新エネルギー車ブランド「阿維塔(AVATR)」が、ファーウェイの傘下企業「引望」に2000億円以上も投資する思惑について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ファーウェイ、自社Tier1に長安AVATRの10%出資を受け入れ
ファーウェイ、自社Tier1に長安AVATRの10%出資を受け入れ
中国国有メーカー長安は2024年8月19日、その傘下のハイエンド新エネルギー車(NEV)ブランド「阿維塔(AVATR)」が引望智能技術有限公司の10%株式を取得したと発表した。
取得価格は(約2344億円)とみられる。
引望はファーウェイの自動車事業ビジネスユニットを根幹として2024年1月に、ファーウェイ本社がある広東省深セン市に設立。
最近ではファーウェイの「鴻蒙智行(HIMA)」、「界」シリーズばかり注目されるが、引望はそのHIMAの主要な供給ベンダーとして位置付けられ、急成長している。
長安と華為の投資協業
AVATRはもともと、長安、寧徳時代(CATL)、そしてファーウェイの三者によるブランドとして展開していた。
ただし、ファーウェイは投資をしない、という社内原則に基づいて、AVATRには出資しておらず、技術提供のみの立ち位置。
今回そのAVATRがファーウェイ傘下の引望に出資したことで、その結び付きをより強固にしていく狙いがありそうだ。
もともとファーウェイと長安は2023年11月、投資協業に関するMoUを締結していた。今回それが具現化した形。
華為の引望戦略
引望はファーウェイが得意とするスマートコックピット、スマートドライブに関連する事業を展開、現在は主にHIMAやAVATRなどファーウェイ関係ブランドの車種に供給している。
今後ファーウェイは自動車メーカーに引望の株式取得を促し、引望を中国最強のTier1に育て上げ、世界展開も見据えている可能性がある。
その第一歩が、協力関係にありながらあまり販売は良好ではないAVATRになったわけだが、それには長安側にも思惑がある。
長安側の思惑
長安のトップ朱華栄氏は今回、「今回の出資は長安の戦略的意図を示すもの。長安の最重要なブランド戦略デバイスとしてAVATRは、長安全体のハイエンド化の象徴だ。引望に初めて出資するブランドとして、引望の開かれたプラットフォームとしての存在感を率先して示した」としている。
つまり、今回の出資はAVATRの再度のテコ入れ、これを機にAVATRを何とか成功させたいという希望が垣間見える。
資本協業に踏み切る訳
ファーウェイは投資をしない、という社則に現れている通り、資本関係で他社と協業するイメージは少ない。
しかし引望に関してはそれを乗り越え、各社の出資を募る、という手法を講じようとするのは、おそらく後発の自動車分野で、より最速で成果を得るための可能性がある。
今後の引望の展望
AVATRに続く出資先としては、HIMAの現状の四社、賽力斯(SERES)、奇瑞(Chery)、北汽、江淮が考えられる。
引望をTier1(編集部註:自動車業界用語で、完成車メーカーに直接部品を供給するメーカーのこと)だとすれば、HIMAはTier0.5ともされ、引望とHIMAのより強固な結び付きを通じて、まずは中国市場、その後は世界展開、というのがファーウェイの自動車業界における野望なのだろう。
出典: https://baijiahao.baidu.com/s?id=1807885382460983664&wfr=spider
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