「女性活躍」の機運とは対照的に「男性一色」な首相周辺
さらに、岸田首相は同性婚を巡る国会答弁で、同性婚の制度化について「社会が変わってしまう」と発言。これが批判されると、慌てて釈明した。この岸田首相の答弁は、法務省が用意した文案にはなく、自らの言葉だったという。つまり「本音」が出たのだ。
そんな岸田首相を支えているのは「男子校」である母校・開成高校出身の政治家・官僚だ。
17年に発足した「永霞会(えいかかい)」という同窓組織には、開成出身の官僚や政治家約600人が参加。岸田氏を首相にすることを目的に活動してきた。首相就任後も、岸田氏の有力な人脈となっている。
また、岸田政権の首相秘書官には、翔太郎氏に加えて主要省庁出身の官僚が7人いる。その8人全員が男性だ。内閣広報官も男性の四方敬之氏が務めている。そんな男性ばかりの首相秘書官の一人だった荒井勝喜氏が、性的少数者に対する差別発言で更迭された。
荒井氏は同性婚などについて「秘書官室もみんな反対する」という趣旨の発言をしたという。このエピソードは、荒井氏だけでなく、岸田首相本人や側近が同様の考えを持っていることを表しているように思えてならない。
岸田首相は早稲田大学法学部出身の記者から「後輩だ」とあいさつされた際、「私は開成高校なので」と返したという話もある。その発言の是非はともかく、同窓組織「永霞会」から側近の面々に至るまで、岸田首相の周りが「女性活躍」の機運とは対照的に「男性一色」なのは事実だ。
さらに言えば、岸田首相は首相就任後も岸田派(宏池会)の会長職を続けていた。一方で、歴代首相の多くは首相就任に当たって派閥のトップから降り、派閥から離脱してきた。岸田首相の対応は異例だった。菅前首相や石破茂元幹事長などが、現首相の「派閥主義」に批判を展開したこともある。だが、岸田首相はこうした指摘も気にしているようには見えなかった。
要するに、岸田首相が「世襲」「男性社会」「学閥」を当たり前とする文化の中で生きてきたことがうかがえる。繰り返しになるが、これらは20~30年前から批判されてきた「古い価値観」である。
岸田首相は国のトップとして「国民の声を聞く」ことに注力しているつもりだったのかもしれないが、「古い価値観」から今一つ脱却しきれず、庶民からは違う世界の人のように映ったのだ。
さて、「なぜ岸田首相は嫌われるのか?」という問題意識への答えをまとめよう。要するに、岸田首相には、地元を買収されて、側近を落選させられてしまう頼りなさ、首相の座の「禅譲」を狙って裏切られる弱さ、庶民と乖離した感覚がある。それでも、首相に権力は集中している。だが、「増税メガネ」と揶揄されるように、財務省など真の権力者に支配されている。そんな首相に対して、国民は無力だ。どうすることもできない。だから、イライラしてしまったということだ。
image by: 岸田文雄 - Home | Facebook