「受験パン」「旅立ちのパン」「修羅場のパン」薄皮クリームパンは最高だ
山崎製パンの薄皮シリーズに代表される、廉価で美味しい菓子パンの数々。最近は円安やインフレの影響で個数こそ減ったものの、ハンバーグ味やたまご味も新たに登場。「いつでもどこでも同じ味のパンが気軽に買える」メリットはあまりに大きく、隠れた国民食となっている。だからこそ「片親パン」などと揶揄されると、私たちは悲しくなってしまうのだろう。
そんな「薄皮クリームパン」に、並々ならぬ愛情を持つ人は少なくない。たとえば都内IT系企業役員のYさん(40代)にとって、薄皮クリームパンは「旅立ちと修羅場のパン」だ。金銭的に苦しい時期だけでなく人生の節目節目で、たびたびこのパンを食してきたという。
「菓子パンというと、私は何とも言えない郷愁を感じます。たとえば、大学卒業後に就職で上京して、はじめて一人暮らしを始めた夜です。ガス開通の手続きが遅れて、お湯すら沸かせない状態。引っ越しの荷ほどきでクタクタの状態で食べたのが、この薄皮クリームパンでした。しかも3パック一気(笑)。濃厚なクリームをコーラで流し込みつつ、来週から自分はどんな仕事をすることになるんだろう、と思いを巡らせた記憶がありますね。いわば旅立ちのパンです。その後30歳を期に起業して、徹夜で某社の大規模システム障害の復旧にあたった時期にも、かたわらには常にこのパンがありました。会社の経営が安定した今でも、当時を懐かしく思い出します。どこでも買えて、少しずつ食べることができ、手も汚れない。仕事で追い込みをかけるときは、今でもよく買いに走ります。そういう意味では、私にとって薄皮クリームパンは気合いと修羅場のパンとも言えるかもしれません」
Yさんにとって、薄皮クリームパンは若さと可能性の象徴。「片親パン」のようなネガティブなイメージは微塵もないようだ。
先のネットメディア編集デスクがいう。
「薄皮シリーズは、実はカロリーメイトやライトミールブロック以上に食べやすく、粉がボロボロこぼれたりもしません。栄養面では劣るもののカロリーは十分で、口に放り込めば両手がフリーになり、PCのキーボードをほぼ無限に叩き続けることができます。そのため、プログラマや作家、絵師の中にも隠れファンは多いんですよ。山崎製パンさんにはぜひそういった切り口で、薄皮クリームパンの名誉回復を図ってほしいところ。SNSでも「部活パン」「早弁パン」「受験パン」など、青春時代の素敵な思い出と関連づけている人は思いのほか多いですしね」
若い頃に“3パック一気食い”をしていたという前出の会社役員Yさん、最近は胸焼けのため1パックにセーブしているという。それでも青春時代の思い出が色褪せることはない。これからも「薄皮」は、私たちの人生をエンパワーメントしてくれることだろう。









