「片親パン」になぜ私たちは怒るのか?再びSNSトレンド入りで注目、日本を支える薄皮クリームパンの「ちょっといい話」

2024.09.04
by 東山ドレミ
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昨年1月にネットで拡散され大いに議論を呼んだ「片親パン」が、再びSNSでトレンド入りした。だが今回は以前と異なり、この差別的キーワードに拒否反応を示す人が思いのほか増えているのが特徴だ。

「片親パン」の悪夢が復活? SNSで再びトレンド入りのナゼ

「片親パン」なるキーワードがSNSでトレンド入りし、あらためて注目を集めている。

山崎製パンの「薄皮クリームパン」や「チョコチップスナック」のように、安価で量が多い菓子パン類をさす。「母子家庭や父子家庭の親が、子どもに食事として与えがち」という偏見にもとづく蔑称だ。ネットメディア編集デスクが説明する。

「もともとは2022年、ひとり親家庭出身を自称するユーザーがTikTokに『5個入りクリームパンで育った』旨を投稿したのが誕生のキッカケです。これ自体は自虐的な意図の投稿だったようですが、2023年始めにはネットスラングの『片親パン』として一般化し、X(旧Twitter)で急拡散。第三者による差別的用法が増加して、大手新聞も報じるほどの問題になりました」

この騒動はまもなく鎮静化。その一方で「片親パン」というキーワードは、Z世代の若者を中心にごく当たり前の日常用語、ないし差別用語として定着したという。それがなぜ今、再びトレンド入りしたのだろうか?

「某メイド喫茶でメイドとして働く女性ユーザーが、『わたしを育てた片親パンベスト4選』と題した画像をXに投稿したのが発端です。山崎製パンの『薄皮クリームパン』『まるごとソーセージ』や、フジパンの『ネオ黒糖ロール』、敷島製パンの『十勝バターレーズンスティック』が写っていました。ただし、この投稿自体が炎上したわけではありません。リプライ欄は平和そのものなんですよ」(前出のネットメディア編集デスク)

この女性のフォロワー数は数百名だが、物議となった画像の閲覧回数は20万回にせまる。あくまでも“ひとり親家庭当事者の自虐”という形式で、他者を差別する内容ではないため、炎上騒ぎにはならなかったようだ。なお現在、この投稿は削除されている。

なぜ私たちは「片親パン」という言葉を許せないのか?

とはいえ、SNSで突然トレンド入りした「片親パン」というキーワードに心がざわつき、思わず目を背けたくなった、という人は非常に多いようだ。

「昨年初めの騒動では『片親パン』の響きや着眼点を面白がる人々がチラホラいたのですが、今回はそのときよりも拒否反応を示す人がグンと増えています。許しがたい差別用語だと感じる人、好きなパンをバカにされたようで悲しくなってしまう人、反応はいろいろ。たとえ他者を攻撃する意図はなくても、投稿者の“自嘲”や“自虐”には共感できない、という、ひとり親家庭出身者も少なくないようですね」(前出のネットメディア編集デスク)

Xでは次のような意見がズラリ。日本にも、まだまだ良識は残っているようだ。

《自虐ネタだとしても、片親パンなんて言葉は使っちゃダメだと思う》

《TikTok界隈だと、フツーに自虐じゃなく差別的な使われ方もしてるからね》

《こういう自嘲が間接的に加害者を生み出す。きっとこの子はまだそれがわかっていないんだろう》

《小さい子供が薄皮クリームパンしか食べられない、そういう貧困家庭はたしかに存在するよ。だからこのメイドを叩く気にはなれないが、片親パンを面白がってる奴はとりあえず消えてくれ》

《自分も母子家庭出身。母は食事をきちんと用意してくれたが、たまには菓子パンの日もあった。それで不幸だと思ったことはない。片親パンとか言われると、自分の親をバカにされた気分になって悲しくなるなあ》

《この女性が特別に悪いっていうより、最近の若い世代が差別ワードに「悪気がなさすぎる」ように見えることが怖い。片親パンとかアフガキとかワーディングがいちいち鋭利》

《薄皮クリームパンには個人的に良い思い出しかないから、片親パンとか言われるとなんか腹が立つ。ガキ共は全然わかってねーなと思って見てるわ》

それにしても気になるのは、山崎製パンはじめ製造元各社への風評被害だ。薄皮シリーズにせよチョコチップスナックにせよ、本来は素晴らしい商品のはずなのに、昨今のネットミーム汚染は度を超しているようにも感じられる。

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