50代後半男性の10人に1人が「更年期」の症状を経験。変えていくべき働く意識

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女性特有のように思われていた「更年期障害」が、男性にも起こるという認識が徐々に広がっています。50代後半男性の10人に1人が経験し、収入減につながるケースも。そこには、今でも「元気でバリバリ、いつでも仕事できる」を働く人間の価値と考える「昭和のスタンダード」が影響していると指摘するのは、健康社会学者の河合薫さんです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、男性従業員が9割というホンダと鳥取県庁の取り組みを紹介。働く人の高齢化が加速し、働く通院者が2325万人もいる日本社会では、働く意識にも変化が必要と、問題提起しています。

男性の更年期障害と長寿社会

メルマガでは「男性の更年期障害」について、何度かとりあげてきました。特にコロナ禍では、働く環境が大きく変わったことで不調を訴える中高年男性が急増。2021年7月にNHKが専門機関と共同で実施した国内初の更年期障害に関する大規模調査では、「55~59歳」の男性10人に1人が更年期特有の症状を「現在、経験している」または「過去3年以内に経験した」としていました。

また、更年期のさまざまな症状によって、仕事やキャリアを失うなど何かしらネガティブな影響がでる「更年期ロス」に至る人は、女性より男性が多く、かつ深刻なこともわかりました。女性では「仕事を辞めた(9.4%)」人の割合が最も多かったのに対し、男性では「人事評価が下がった・降格した(9.3%)」人の割合が最も多く、非正規などで働く男性の17.9%が「収入が3割以上減った」としていたのです。

男性の場合、本人はもとより周りも「更年期症状である」と気付けないケースが多いのが特徴です。発症年齢も30代後半~70代と女性より幅があり、社会的なストレスがきっかけで、更年期障害を発症しやすいこともわかっています。

そんな中、企業や自治体で男性更年期障害を支援する動きが広がっていると朝日新聞が報じました。従業員の9割が男性というホンダは、2022年の10月から、更年期障害の症状や治療法を医師が解説するオンラインセミナーを聴講できるようにしたり、産業医などへの相談を後押ししています。鳥取県庁では23年10月から、休暇制度での支援をスタートし、年間5日までの特別休暇を取得できるようにしました。

ホンダに勤める知人に内情を聞いたところ、かねてから「女性だけではなく男性社員のウェルビーイングに力を入れた方がいい」との声があったとか。ただ、やはり自分から「調子が悪い」と弱音を吐くのに抵抗があるし、「更年期障害」を自分事にするのは、結構難しいと。それでも会社側が、理解し、受け入れ、相談できる体制を整えてくれているのはありがたい、と話していました。

最近でこそ女優さんなどが、自分の更年期障害をカミングアウトするようになり、更年期障害を前向きに受け入れる女性も増えてきましたが、男性の場合はハードルが高すぎます。

そもそもこれだけ高齢化が進み、働く人の半数以上が50歳を超え、この12年間で60歳以上の従業員は2倍に増え、特に65歳以上は3.2倍と爆増したのに、働くスタンダードは「元気でバリバリ、いつでも仕事できる!」のままです。

そんな働いている人のうち、病気やけがで通院している人が2325万人に達し、働く人全体に占める割合は4割を超え、01年の調査の28.2%から12.4ポイントも増えているのに「昭和のスタンダード」が続いているのです。

働くという行為は、幸せになるための最良の手段なのに。70歳、75歳まで働く時代を「私」たちはどう生き抜けばいいのか。みなさまのご意見、お聞かせください。

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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