「高市総理の靖国参拝」が良好な日米関係を破壊する理由
高市氏と言えば、「同盟国を説得して、総理の靖国参拝を実現」などと言い出しています。この発言ですが、「今回は勝てない」という敗北宣言として、自分の選挙区向けに言っているのかもしれませんが、そうではないとしたら、どう考えたら良いのでしょうか。
同盟国ですが、まさか台湾だけとか、それでも無理だと思いますが、EUが入るはずはなく、やはり直接の対象はアメリカということになると思います。教科書的に言えば、東京裁判というのは「和平協定」であって、これがベースとなって戦後日本の国体も、サンフランシスコ平和条約による再独立もあるわけです。
ですから、いわゆるA級戦犯の方々は、平和のための犠牲として絞首台に登られ、そのこと、つまり彼らが死を受け入れ、名誉も返上して、日本人と昭和天皇の身代わりになったと理解ができます。そこには機関としての昭和天皇との間で言葉なき黙契があると推測されるし、だからこそ、東条由布子氏以外の遺族の方々は沈黙を守ってきたわけです。
その一方で、松平宮司の全くの独断で行われた戦犯合祀については、これは竹田恒泰さんから直接聞いたのですが、合祀を解除するということは、神道の本質から考えて不可能なのだそうです。
そうなると、総理が靖国に行くというのは、テクニカルには不可能です。このままでは、アメリカに対して東京裁判に対して異議を唱えるという意味になります。また、その場合は、キッシンジャーと周恩来の密約にあるように「在日米軍は日本軍国主義復活を防止する瓶の蓋」だから、瓶の中の行動は「人畜無害」という「アメリカの保証」が解除されてしまうことになります。
そうなると、戦後の太平洋の秩序において重要な軽武装の日本と、自由と民主主義の名において戦勝国となったアメリカによる「かつての仇敵の和解による平和」という概念が崩れてしまいます。そうなれば、仮想敵国の思うツボであり、日本の安全の保障は難しくなります。
まあ、そこまで大真面目に考えなくても、話だけでも持ち出せればという思いもあるかもしれません。仮の話「もう戦後79年も経過している」のだから、現代の日本人が「敗戦国の屈辱」を我慢せよというのは無理なので、アメリカも「総理の靖国参拝」を許して欲しい、そんな「話だけ」です。
仮に「話だけ」としても、ハリス、オバマ、ヒラリーというような民主党本流はまず難しいでしょう。FDRとトルーマンの作った戦後の太平洋国家アメリカという「国のかたち」に反するからです。