本当に台湾有事で沖縄は“戦地と化す”のか?早大教授が煽る「あり得ない危険シナリオ」に浮かぶ“5つの大きな疑問符”

 

あり得ない中国の「ある日突然」の台湾侵攻

第1に、中国が例えば「2025年X月」とかの近間の或る日に突然、台湾侵攻を決断し実行するということは、100%、あり得ない。理由は簡単で、そうすることに中国にとって政治的にも経済的にも文化的にも道徳的にも、何のメリットもないからである。

中国の対台湾武力行使があるとすれば、台湾当局が公然と「独立」を宣言しそのように行動した場合のみで、それは「中国は1つ」という北京政府の大原則に反するというのみならず、どんな国家にとっても致命的な利害に関わる「領土の一部喪失」に当たるので、中国に限らず日本でもどこでもおよそ主権国家である限り、武力行使を辞さずにそれに断固対処するのは当然だろう。

逆に、台湾はその中国の立場を熟知していることに加え、それを無視して一方的な「独立」に走ったとしても何のメリットもないことを深く理解しているので、民進党政権としても、ギリギリの「言葉の戦争」は試みるけれども、それ以上には進まない。その阿吽の呼吸の上に中台関係が成り立っているのことを知るのが、台湾情勢理解の根本である。

しかもここでは「2025年X月」にもそのような事態が起こりうるかの煽り立てが仕込まれている。フィリップ・デービッドソン元米海軍大将=インド太平洋軍司令官が2021年3月に米議会で「6年後までに中国が台湾侵攻に踏み切る」と証言して話題となったが、その理由を糺せば、習近平が2027年に国家主席として4選を果たそうとすればそれは戦争の1つでも起こして非常事態を演出しなければ実現不可能なことだというに尽きる。

これは中国の権力構造はじめ同国の事情に全く無知なアホ軍人が、単に中国の脅威を強調して予算を獲得しようとして振り撒いた戯言にすぎなかったことは今では明らかになっている。

そのデービッドソン予言よりさらに早く、25年にもその事態がありうるというのであれば、どうしてそのような想定が成り立ちうるのかを説明しないといけない。これは本当に大事な問題で、誰にしても、根拠もなしに、中国が25年だか27年だかに台湾に侵攻するだろうというようなことを言って人々を惑わしてはいけない。まして、国際政治学者においておや、である。

いや、それは「例示」であって、必ずそうなるとは言っていないと、この教授は弁解するのだろうけれども、こういうさりげない表現一つでも当事者には切迫感を以って受け止められる可能性があるわけで、こういうことを根拠をきちんと示さずに言い散らし、まるで「そうなったらどうなのよ?」と言って宮古島はじめ人々の心理を棒で突いて面白がっているように見えるのは一体どうしたことなのか。

私に言わせれば不謹慎極まりなく、こういう人士にそれでなくても壊れやすい国際情勢をチャラチャラした態度で扱って欲しくない。

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