今から約42年前の1982年7月25日に発売予定も、諸事情から「お蔵入り」となっていたシンガーソングライター・作曲家の滝沢洋一(たきざわ・よういち 1950-2006)が制作した幻の2ndアルバム『BOY』(ボーイ)が12月18日(水)、CDとアナログレコード盤の2種類で初リリースされた。
CD版『BOY』は、ソニー・ミュージックレーベルズから発売、ボーナストラックとして世界的シティポップ大ブームの立役者である米シカゴのDJヴァン・ポーガムによる「かぎりなき夏」Remixヴァージョンを収録のほか、インスト曲「アネクドート」を除く8曲のカラオケ版の音源も収録されている。

滝沢洋一『BOY』CD版(ソニー・ミュージックレーベルズ)
また、アナログのLP盤はローソンエンタテイメント(HMV)が販売。こちらも12月18日に同時発売された。こちらは全9曲収録で、42年前にお蔵入りされたオリジナルの曲数、曲順を再現。ライナーノーツは、弊サイトMAG2 NEWSの滝沢洋一関連記事をすべて手がけた音楽ライター・都鳥流星による16,000字の詳細解説となっている。
【入荷情報】
滝沢洋一/BOY (LP/WQJL190)
1stアルバム『レオニズの彼方に』に続く、当時なぜかお蔵入りになった幻の2ndアルバム『BOY』が40年以上の時を経て奇跡のリリース!
*西城秀樹が1984年3月5日にリリースした17作目「GENTLE・A MAN」収録の「かぎりなき夏」のオリジナル・ヴァージョンも収録。 pic.twitter.com/9gueUzcBL7— HMV record shop 心斎橋 (@HMVrs_sinsaib) December 17, 2024
滝沢洋一は、1976年初旬に音楽業界で初めて「ニューミュージック」という言葉を公共の電波に乗せたと言われている伝説のシンガーソングライター。しかし、ヒット曲に恵まれず、ソロアルバム『レオニズの彼方に』とシングル3枚を発表しただけで1982年に短い歌手活動を終えた。
若き滝沢のバックバンド「マジカル・シティー」には、のちに山下達郎バンドに参加するドラマーの青山純とベーシストの伊藤広規というシティポップ「黄金リズム隊」が在籍した他、シティポップの世界で再評価が著しいアレンジャーの新川博もピアノ(キーボード)として在籍していた。また、杉真理の1stアルバムにも参加した伝説のギタリスト・牧野元昭も同バンドのメンバーである。滝沢は、彼らがアルファレコードを経由してプロデビューするキッカケを作った「シティポップ 影の功労者」であった。
滝沢は2006年に肝臓の持病が悪化し56歳の若さで死去したが、9年後の2015年にはソロアルバム『レオニズの彼方に』(東芝EMI/1978)が音楽ライター・金澤寿和らの尽力によって初CD化され「隠れた名盤」「奇跡の一枚」と音楽業界で大きな話題となった。
しかし、1982年7月にお蔵入りとなった滝沢の幻の2ndアルバム『BOY』は、現在もミックス済みマスターテープが「行方不明」のまま。二度目の発売延期に見舞われそうになった『BOY』だが、世界で初めて滝沢の生涯と音楽活動を伝えた弊サイトMAG2 NEWS運営元の「株式会社まぐまぐ」のサポートによって、ワーナーに奇跡的に保存されていたマルチマスターテープから新たにミックス作業をおこなうことに。
そして12月18日、名エンジニア・坂本充弘(あつひろ)が技巧の限りを尽くし、アルバム『BOY』の世界初リリースが奇跡的に実現することになった。
18日のリリースと同時に、CD版『BOY』は全サブスクも解禁。Spotify、Apple MusicほかでヴァンのRemixとカラオケ版も聴くことが可能だ。
そして今回、サブスクおよびCDにも収録された米シカゴのDJヴァン・ポーガムの「かぎりなき夏」Remixヴァージョンは、25日にアナログシングル盤としても発売されることが決定した。

滝沢洋一『かぎりなき夏』(Van Paugam 2024 Remix)シングルアナログ盤(ワーナーミュージック・ジャパン)
ヴァンは1985年フロリダ州生まれのDJで、2016年より日本で70年代後半から80年代にかけて作られた「シティポップ」と呼ばれる楽曲を1本の曲に繋ぎ合わせたMix動画を、自身のYouTubeチャンネルで複数公開。
3年後の2019年時点で10万人近いチャンネル登録者数を誇り、全動画の合計再生回数が約1千万回に達するなど、日本のシティポップ文化を世界中に広める役割を果たした「現代のフェノロサ」とも言うべき存在だ。
しかし、ヴァンは当時のYouTubeの規約に違反しているとして著作権侵害の通告を受け、2019年2月14日にアカウントをBANされた。その後、YouTubeの規約が変更になり、著作権者を明記すれば一部の楽曲はアップできるようになったが、世界的シティポップ大ブームが到来した頃にヴァンを思い出す者はなく、ブームの先駆者であったにも関わらず、その存在は最近までほとんど知られていなかった。
そんな悲しき先駆者のヴァンは、2020年代から過去の功績に注目が集まるようになり、今では日本のテレビやラジオの「シティポップ特集」番組に出演するなど、その名が日本の音楽ファンにも徐々に浸透するようになってきた。
“お蔵入り”の憂き目に遭った作曲家・滝沢と、“悲しきブームの先駆者”DJ・ヴァンは、奇跡的に「かぎりなき夏」という楽曲の縁で結ばれ、音楽ライター・都鳥流星とヴァンの2年近くに及ぶ親交をキッカケに、この度ついに滝沢版「かぎりなき夏」のRemixが実現した。
エレクトロポップあるいは80年代ディスコ風とも言える感じにアレンジされたDJヴァンによる滝沢版「かぎりなき夏」RemixのEP盤は、BASEのまぐまぐ直営ネットショップ「MAG2 NET SHOP」で予約を開始している。
● 滝沢洋一『かぎりなき夏』Van Paugam 2024 Remix / 1982オリジナル Mix アナログシングル(EP盤)特設サイト
このシングル盤のB面には、滝沢邸から奇跡的に発見されたオープンリールテープ収録の滝沢版「かぎりなき夏 オリジナル1982 Mix」を収録。これは1982年当時の完全オリジナルMixであり、CD版およびLP盤収録の「2024年Mix」には音源ソースが不明のため入れられなかった「波のSE」が入っている唯一無二のレア音源だ。
このEP盤B面の「かぎりなき夏 オリジナル1982 Mix」は、12月18日に同時発売されるCDとアナログアルバム(LP盤)には「未収録」。元祖シティポップアーティストによる、このシングル盤でしか聴けない「42年前の奇跡」の音にぜひ触れていただきたい。
↓『BOY』奇跡のリリースまでの経緯については、以下の記事を参照
【関連】42年間も封印された“幻のシティポップ”。滝沢洋一2ndアルバム『BOY』悲願の初リリースと名曲「かぎりなき夏」をめぐる奇跡の物語
ネットの反応
隠れ名盤『レオニズの彼方に』で知られるシンガーソングライターの1982年の未発表作品。杉真理に通じるメロディアスな内容で、シティポップというよりはパワーポップという感じ。お蔵入りだったとは思えない傑作!
滝沢洋一の幻のセカンド・アルバム『BOY』がついにCD発売。 https://t.co/UNYRjQvFwD pic.twitter.com/3XLa0LHFoB
— 栗本斉 ★新刊『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』★「シティポップの基本」も‼︎ (@tabirhythm) December 18, 2024
そして滝沢洋一さんの幻のセカンドも入荷しました‼︎いま聴いてるんですがマジで最高です‼︎店頭分は一枚のみなのでお早めにどうぞ‼︎
本日も20時までお待ちしております‼︎#StopGazaGenocideNOW pic.twitter.com/2wG9kDrig6
— BATHING RECORDS (@Bathing_Records) December 18, 2024
滝沢洋一さんの「BOY」を購入して聴いています。傑作「レオニズの彼方に」以上に自信に満ち溢れ、熱量を感じる作品たちです。初めて Gilbert O’sullivan や Kestrel を聴いた時と同じぐらいの衝撃を受けています。
— hi_rider (@hi_rider) December 17, 2024
#NowPlaying
滝沢洋一 – BOY
まさか2ndアルバムが聴ける日がくるとは夢にも思わなかった pic.twitter.com/eUMiBmACcH— seamonkey (@otgrra) December 17, 2024
滝沢洋一、幻のセカンド・アルバム『BOY』明日発売。1982年のお蔵入りアルバムが奇跡の復刻。ビートたけしの「シティーバード」のセルフ・カヴァー、西城秀樹の「かぎりなき夏」のオリジナル・ヴァージョンも収録。復刻までの道のりを記したライナーノーツも読み応え充分。ボートラ付きのCDも同時発売 pic.twitter.com/KHLEMHjPP2
— やまんだ (@Yamandaaa) December 17, 2024
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