「家族会」と「救う会」は連絡事務所設置を頭から否定
国交のない国同士が関係を前に進めるには、水面下交渉、実務者交渉、公式交渉などが必要だが、そのための方法として常駐の事務所(それを「連絡事務所」と呼ぶかどうかは本質的問題ではない)を置くことはプロセスとして必須だろう。
石破茂議員は総理・総裁になる前から日朝交渉を前に進めるために平壌と東京に連絡事務所を置くことを主張してきた。ところが拉致被害者「家族会」と支援組織の「救う会」は、北朝鮮側の「時間稼ぎに使われるだけで意味がない」と頭から否定している。北朝鮮に拉致された可能性を排除できない人たちを救うことを目的とした「特定失踪者会」では「なんでもやってみる意味はある」とする意見から「首脳会談を実現する目的なら構わない」とする意見もある。
石破茂総理の意見も確たるものがあるわけではなく、「水面下の交渉を続けるのは政府として無責任であり、北朝鮮当局との公式な交渉を早期に目指す。その関係づくりのための連絡事務所だ」(『西日本新聞』2020年9月8日付け)と語ったこともあれば、「国家主権の侵害である拉致問題解決のため(北朝鮮に)連絡事務所を作る。成果を一つ一つ検証する仕組みを作る」(『東京新聞』、2018年9月11日付け)と語ったこともある。「関係づくり」であり「成果を一つ一つ検証する仕組み」でもあるというのだ。
じつは日朝ストックホルム合意(2014年)を履行する経過で、平壌に連絡事務所を設置して、北朝鮮側が提出する報告書を専門家が検証していくことが検討された。安倍晋三政権のリアリズムだ。
「何かで動けば必ず変化が生まれる」。これは横田滋さんが何度も語っていたことだ。石破茂政権が日朝交渉を進めたいならば、連絡事務所構想をはじめとして、安倍晋三路線の軌道修正を行わなければならない。
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