前回の記事で、アメリカのサンシャイン・ポップに触れて米国の「美徳を失った寂しさ」について語っていた、生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストの引地達也さん。引地さんは、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の中で、さらに1960年代の1曲「夢のカリフォルニア」を紹介し、現代への憂いを綴っています。
「夢のカリフォルニア」を想う時代にはこの曲を
前回、米国でのトランプ大統領就任とともに始まった強権の発動に伴い、寛容と多様性の輝きを帯びていた米国の美徳が失われているような寂しさを1960-70年代の「サンシャイン・ポップ」といわれる音楽を紹介しながら、考えてみた。
これがちょっとした反響をいただいたので、今回は1曲にしぼって、その感慨にふけってみたい。
取り上げるのはママス&パパスの「夢のカリフォルニア」(California Dreamin)である。
ダンヒル・レコードから1965年に発表され、全米第4位のヒットとなった曲は、日本のTBSがドラマの曲として採用したこともある。
また、このレコードレーベルから発表された曲はヒットを立て続けに飛ばし、「ダンヒル・サウンド」と呼ばれ、一世を風靡した。
ママス&パパスの活動は65-68年の約3年でしかなかったが、この曲は今の時代にひっそりと輝きを増しているようにも思う。
物悲しい曲はジョン・フィリップスとミシェル・フィリップスの夫妻によってニューヨークで書かれたという。
「すべての木々の葉は茶色、空は灰色 私は歩いていた ある冬の日に」から始まり、「安らかで暖かく過ごせたら 私がロサンゼルスにいたら カリフォルニアを夢見てる そんな冬の日」とカルフォルニアの明るい風景を想う、という展開だ。単純に暗い状況下にある人が明るい場所を夢見る、との解釈も成り立つが、この抽象性ゆえに多くの想像力が働く歌でもある。事実、次の歌詞が意味深い。
「教会に立ち寄り 路を進んで 私はひざまずいて 祈るふりをした」。
そして「そう 牧師は寒い日が好き 人がそこにとどまるのを知っているから カリフォルニアを夢見てる そんな冬の日」と続く。
今、暗い時期だと感じているならば、カリフォルニアが希望の光なのだろうか。
牧師に跪きながら、安らかで暖かい場所を求める人を想像してしまう。
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