石破首相の「致命的失政」か?自公立「大連立への布石」か?高額療養費見直し「二転三転」の真意を読み解く

 

苦しむ患者を切り捨てようとした厚労省官僚と審議会メンバー

自己負担の限度額を引き上げる案は、厚労省が昨年11月15日、突如として全世代型社会保障構築会議の議論の俎上にのせた。口火を切った笠木映里氏(東大大学院法学政治学研究科教授)はこう語った。

「本日の議題になっていない点で恐縮ですけれども、この会議の改革工程表に記述された医療保険制度との関係で、高額療養費制度の基準の見直しというものがあります。これに関して、基準の引上げに向けた議論が進められているものと理解しております」

これをきっかけに、メンバーから関連する発言が相次いだ。この10年の間に高額な薬剤が次々と出ていることなどを理由に自己負担限度額の引き上げを妥当とする意見が多かったが、なかには「この10年間で世代を問わず世帯全体の所得は着実に上昇している」(増田寛也・ 日本郵政社長)という、ひどく庶民の生活実感にそぐわない意見もあった。

清家篤座長(日本赤十字社社長)はこう総括した。「持続可能な医療保険制度の構築に向け負担能力に応じた負担を求めるという観点から、速やかに検討に着手していただければと考えております」

その後、4回にわたる社会保障審議会・医療保険部会の論議を経て、見直し案が決定した。その間、わずか1か月。医療保険部会長、田辺国昭氏(東大大学院法学政治学研究科教授)は「見直すことの必要性、大きな方向性に関しては、皆様方の意見が一致していたという認識です」と締めくくった。

ひかえ目ながら反対らしき意見も出たが、なぜか置き去りにされた。議論が生煮えなのは明らかだった。

すべては事務局をつかさどる厚労省官僚のペースで進み、予定どおり新年度予算案に組み込まれた。この間、ガンや難病に苦しみ、多額の医療費負担を強いられている患者の声を聞く機会はついぞ設けられなかった。

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