進むも地獄、戻るも地獄。独裁者プーチンに足元を見られたトランプ「形だけの停戦」が自らの首を絞める

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開戦から3年以上が経過した3月19日、ようやく「部分停戦」の合意を見たウクライナ戦争。しかしながら世界の分断が鮮明になるばかりの状況であることは否めないようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、手柄を急ぎ停戦という形だけを追い求めるトランプ大統領が、国際社会にもたらす負の影響を解説。さらにアメリカが、自らを「進むも地獄、退くも地獄」という状況に追い込んでしまった原因を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:停戦を急ぐトランプ外交とロシアの国際表舞台へのカムバックが意味するもの

漂う不穏な空気。停戦を急ぐトランプ外交とロシアの国際表舞台へのカムバックが意味するもの

「前向きな感触を得ている。きっと大きな進展が生まれるだろう」

そのような非常に前向きな言動で、ロシア・ウクライナ間の停戦協議を推し進めているトランプ大統領。

3月18日に行われた米ロ首脳電話会談では、以前、米・ウクライナ間で合意した「30日間の停戦に向けた提案」はプーチン大統領には受け入れられず、代わりに【エネルギー関連施設への攻撃停止】が提案され、19日はゼレンスキー大統領も受け入れる意向を示し、部分的な停戦が発効しました。

ただ米ロ間の解釈は異なっており、ロシア側が【30日間のエネルギー関連施設への攻撃停止】と発表したのに対し、アメリカ政府は期限を示さず、対象もエネルギー関連施設と民間インフラと発表し、合意内容の解釈・認識にずれが発生しています。

アメリカの後ろ盾を得たいウクライナは米ロ間の提案を受け入れる意向を示しましたが、アメリカ政府側の解釈に基づいた合意となっており、この認識のずれがいつロシア・ウクライナ間の停戦の崩壊につながるか、はらはらする状況です。

一応、部分的な停戦が成立したのは前向きの姿勢だと評価できますが、合意後、トランプ大統領が【ウクライナ国内の原発はアメリカが管理する。そうすることで安全が守られる】と発言したことで、ロシア側が不快感を示す事態になっているのみならず、ウクライナ側も本件に対してはスルーしており、不穏な空気が漂っているように感じています。

部分的な停戦については、欧州各国もトルコも、そして中国も歓迎の意を示し、NATOとその仲間たち(ただしアメリカを除く)の計30か国はウクライナの戦後復興における協力に合意していますが、その内容に停戦監視のための欧州軍の駐留が含まれていることで、ロシアから激しい反発と反対の意が述べられており、ロシアと欧州各国との関係の悪化、および緊張の高まりが明らかにみられ、今後、ロシア・ウクライナ間の戦争がどのような帰結を迎えたとしても、欧州とロシアの新たな緊張と戦いが懸念される事態になっています。

日本は戦後復興における協力を惜しまない旨、明確に述べていますが、あえて現在の停戦協議についてはコメントせず、「話し合いがうまくいき、ロシア・ウクライナ両国民に一刻も早く安寧の日々が戻ることを願う」と言うにとどめ、現在進行形、特にアメリカががっつりと取り組む停戦努力に立場を表明しない姿勢を取っています。個人的には賢明な選択だと考えます。

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