鮮明になりつつある国際社会の完全なる分断と緊張の高まり
また、アラブ連盟首脳会議で合意された“ガザ地区の戦後統治に関するアラブ提案”を提供したアラブ各国も挙ってイスラエル非難を強め、イスラエルによる明らかな蛮行と相次ぐ国際法違反を咎めない(咎めることができていない)アメリカ政府への非難も鮮明にし、ここに国際社会の完全なる分断と緊張の高まりが鮮明になる事態に発展しています。
トランプ政権が誕生し、イスラエルをある程度制御するものと期待されていたため、べったりのイスラエル寄りの立場を公然と示すアメリカ政府の姿勢には、多くの国から失望と怒りが明確に示され、中東地域に訪れると期待されたデリケートかつつかの間の平穏は、早くも混乱と新たな戦いの種火という形で激化し始めています。
今週末、エジプトとカタールが仲介者としてイスラエルとハマスに自制を促し、停戦合意の維持を働きかけていますが、肝心のアメリカが協力を拒み、イスラエルと共にハマス非難を繰り返す事態に、実は両国ともお手上げ状態のようです。
エジプトについては、アラブ連盟の本部をカイロに置き、アラブ社会との協力を推し進めようとしている矢先に(アラブ諸国からは距離を置かれてきた経緯あり)、アメリカに顔に泥を塗られた形になり、大きな政治的危機を経験しています。
ご存じの通り、年間70億ドルがアメリカからエジプトに供与され、軍事的な協力も図っているエジプトですが、その姿勢をアラブ諸国は非難しており、アラブの仲間でいるのであれば、アメリカから距離を置くべきとの意見に晒されています。
一方、アメリカからの恒常的な支援なしには成りゆかない事情もあり、アラブと袂を分かっても、アメリカを惹きつけておくべきという国内勢力との板挟みにあっています。
さらには、ガザ地区と隣接するため、ガザからのパレスチナ人の受け入れは、すでに国内で安全保障上の懸念となっているイスラム同胞団の勢力拡大に直接的につながることが懸念されていることから、ここで国際社会、特にアラブ世界に対して面目躍如をしたいエジプト政府と、イスラム同胞団の拡大がエジプト全体に及ぼす脅威とのバランスに苦しめられ、ガザ問題の仲介においても、正直煮え切らない態度が目立ち、エジプトは停戦合意の遂行に対してあまり役には立っていないと感じています。
そのような混乱が高まるアラブ世界において、プレゼンスを一気に高めているのが中国とロシアで、ロシアに至っては、完全に国際社会へのカムバックの大事な要素になってきています。
「調停者・仲介者としてのアメリカは適格性にかける半面、ロシアおよび中国はサイドを取ることなく、真に地域の復興と発展のために尽力してくれる」というのが、どうも最近の中ロ評のようです。
ここでは皮肉にもロシアがウクライナで何をしているかに対しては目をつぶっている様子が覗えますが、いろいろな状況に鑑みると、アラブ諸国が国際社会においての独立と独自性を維持するために、実利主義に立って、欧米と中ロの間でうまく立ち振る舞う様子が顕著になってきています。
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