中東での緊張高まりの背後で勢力拡大に成功したプーチン
その背景には、盲目的にイスラエルを支持し、ネタニエフ氏の言うことを鵜呑みにしているトランプ大統領の姿がありますが、ネタニエフ首相が直面する内政上の時限爆弾の存在も、過激な行動にでる後押しをしています。
それはイスラエル国会において今月末までに来年度予算を可決しないと、憲法規定により、議会を解散しなくてはならず、それはすなわち総選挙が行われることになります。
しかし、今、総選挙を行った場合、確実にネタニエフ首相率いるリクードは敗北し、敗北した暁には、ネタニエフ首相に対する数々の訴追が行われることになるため、ネタニエフ首相としてはいかにして議会を解散させないかという手段を考える必要があります。
現時点では予算可決に必要な過半数には届かないことが確実視されていて、絶体絶命と言われていますが、予てより「ガザに対する再攻撃の実施」を連立への再加入の条件に据えてきた極右政党ユダヤの力(ベングビール党首)を取り込んで過半数を得て、予算を可決させて解散を回避するために、アメリカからも自制を求められていたにもかかわらず、ガザへの本格的な攻撃再開に踏み切ったという、人道主義のかけらもない、政治的な理由で、罪なき一般市民の生命を奪うという蛮行に出たと考えられます。
そのような非人道的行為を目の当たりにしても、その後押しをしてしまったのがトランプ大統領であり、アメリカ政府であることは否めない事実であることから、アメリカとしてはイスラエルを支持し続けるしかありませんが、これはトランプ大統領自ら自分の首を絞めることに繋がりつつあります。
NATO加盟国である欧州諸国はすでにアメリカとの距離を取り始め、かつマクロン大統領が音頭を取って欧州安全保障体制の強化を掲げて、アメリカ離れを提唱していますが、これは同時に世界中のアメリカの同盟国に対しても「アメリカとの距離感の見直しを強いる」事態を生み出しつつあります(その後押しをしているのが、愚かな関税ですが)。
Grand Visionもなく、詳細かつ明確な戦略・計画もないまま、行き当たりばったりで停戦という結果だけを追い求める姿は、戦争を止め、世界を安定させるどころか、世界を大いに恐怖に陥れ、さらなる不安定要因を作り出し、そしてアメリカと自由世界が警戒し、忌み嫌う中ロによる国家資本主義体制の勢力圏を拡げるだけの結果に繋がりつつあるという分析も多く示される事態になってきています(私自身は、今後の世界の勢力図については、ちょっと違った見方をしていますが)。
3年前に突如ウクライナに侵攻し、ロシアの国際社会での立ち位置を危うくしたプーチン大統領は、欧米社会による経済制裁網の穴を上手に用い、中印およびグローバルサウスの国々の力を得て、不思議なことに経済発展を成し遂げただけでなく、アメリカ政府の(バイデン・トランプ政権の)まずい国際対応の隙をついて、中東での緊張の高まりの背後で勢力を拡大し、仲間を増大してきました。
その結果、再びロシアは国際舞台におけるパワーハウスの座に復帰し、ウクライナに対して戦況で優位な状況を作り出しつつ、中東情勢にも介入し、さらには今、紛争が拡大し始めているルワンダとコンゴ民主主義共和国(DRC)の案件にも関与して、軍事的なプレゼンスのみならず、DRCに眠るレアアース(コバルト)の権益を獲得しつつ、ルワンダの最先端ドローン技術とICTのノウハウも吸収するという復活の基盤を着々と築いています。
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