社長として不適切と言わざるを得ない港浩一氏の行動
また、あたしが個人的に一番驚いたのは、港浩一社長の「当事者意識ゼロの振る舞い」です。今回の報告書によると「週刊文春」の報道を受けてフジテレビは2024年12月27日付でHPに公式リリースを出しましたが、この日の打ち合わせからリリースを発表するまでの間、社長以下役員は、誰1人として打ち合わせに参加しなかったというのです。で、この日、港浩一社長が何をしていたのかと言うと、昼間はゴルフを楽しんでいて、その後は会食と宴会をハシゴしていたのです。
報告書には、現場で報道対策に当たっていた社員らの「(港社長には)大きく失望した」という発言が記され、「ゴルフまでは容認するとしても、その後、報道対策チームの現場に戻らず、アルコールが入っていると思われる状態で意見のやりとりを継続していた態度に怒りを隠さない者が複数いた」と書かれていました。そして第三者委員会は「客観的に見ても会社として重大な危機管理が進行している最中に社長がとる行動として不適切であったと言わざるを得ない」と結んでいます。
とんねるずの2人を始め多くのタレントから「港っち」と呼ばれ、フジテレビの看板プロデューサーとして大ヒット番組を数多く手がけて来て、とうとう社長の座まで上り詰めた人物なのに、どこで間違ってしまったのでしょうか。今回の報告書では「日枝久氏が組織風土の醸成に与えた影響も大きい」と指摘しています。どんなに優れた大統領でも、同じ政権が長く続くと必ず上から腐敗が始まるため、民主主義国家では同じ人物が大統領をつとめられる任期の回数を定めています。フジテレビにはそれがなかったことが原因だったのでしょうか。
そして、次にあたしが驚いたことは、今回の調査結果では、何よりも重要な当事者からの聞き取り調査が行なわれていないという点です。今回の事案は当事者双方に守秘義務があることから、第三者委員会として「守秘義務の解除」を申し入れたところ、被害女性は全面的な守秘義務解除に同意しましたが、中居氏が解除に応じなかったため、直接の聞き取り調査ができなかったのです。そのため第三者委員会は、当事者間のLINEの内容、フジテレビ関係者の報告内容、関係者のヒアリング、客観資料などを精査した上で、事実認定を行なったと説明しました。
不祥事を起こしても説明責任を果たさずに逃げまくる自民党議員のような中居氏の態度に、あたしは1人の女性として怒りを禁じ得ません。あたしは性暴力を受けてから精神的に立ち直るまで、15年以上も掛かりました。その間、どれほど苦しんだか、自分のその場の性欲だけで犯罪を犯すような身勝手な人物には、被害者の苦しみなど1ミリも分からないのです。
今回、第三者委員会が指針としたのは、WHO(世界保健機構)が公表している「World Report on Violence and Health」の「Sexual Violence(性暴力)」の定義だそうです。WHOは「性暴力」を「強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的な行為を求める試み、望まない性的な発言や誘い、売春、その他個人の性に向けられた行為を言い、被害者との関係性を問わず、家庭や職場を含むあらゆる環境で起こり得るものである。また、この定義における強制力とは、有形力に限らず、心理的な威圧、ゆすり、その他脅しが含まれるもので、その強制力の程度は問題とならない」と定めています。
これを踏まえた上で、第三者委員会は、中居氏が被害女性に行なった行為を「性暴力」と認定し、「性暴力には同意のない性的な行為が広く含まれており、性を使った暴力全般を意味する。当委員会は性暴力を重大な人権侵害行為の一つと認識している」と説明しました。
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