アーティストのベスト盤と同じ。「ほぼ日手帳 カズン」のユーザーだけが味わえたノートスペース読み返しという“いい気分”

 

■デジタルと紙面

また、いくらでも書けるデジタルには──通常は──「紙面」という考え方がありません。言い換えれば、固定されたフォーマットはなく、自由に次々と追記できるようになっています。

そうすると、読み返すときに長々とスクロールしていく必要があります。しかも、どのくらいの長さをスクロールしなければならないのか事前にはわかりません。人間の脳は常に「シミュレーション」しているわけですが、固定された紙面では安定的になるシミュレーションが、スクロールだとかなり不安定になってくるのです。これは行動を阻害する要因になりえます。

また、特定の箇所だけを拾いながら読み返すことも難しくなります。そもそも特定の場所に機能を割り当てることがほとんどできません。それこそExcelなどをノートツールとして使っていかないと難しいでしょう(それはそれで面白いアイデアですが)。

結果的に、書くときに自由に気楽に好きなだけ書けることは、読み返すときの困難さを肥大化させていきます。

■対策は?

では、どうしたらいいのでしょうか。

一番手っ取り早いのは「読み返しを破棄する」です。読み返しにくいのだったら読み返さなくてもいい。検索で見つかればいい。超合理主義的態度です。これも別に悪くはないでしょう。デジタルツールに自分の主義を寄せていけば必然的にこうなります。

なので──私は「必然的にこうなる」に対して天の邪鬼な態度を取りたい性質があるので──、今回は別の方策を考えましょう。

デジタルでの記入において、読み返しの機能性を担保するにはどうすればいいか?

一つには「入力を制限する」があるでしょう。ツイッターの140字制限と同じで、日ごとノートを書くときに、紙面サイズを固定するのです。具体的には作成する行数の上限を決めておく。そうすれば、脳のシミュレーションは安定します。

一方でそれはデジタルの力を弱める方策でもあるでしょう。「だったらデジタルツールを使う意味ないんじゃない?」と私の心の声がささやきかけてきます。

となると次策は切り出しです。とにかく自由奔放に書くだけ書いて、その後に特定の幅に収まるように細々したものを切り出していく。そうすれば、紙面サイズを一定の幅に抑えつつ、十全な記述量が確保できます。

実にすばらしい!

と思うわけですが、まさにそれができない、というのが起点の問題でした。つまり、たくさん書いてしまうと、その切り出し処理が追いつかなくなるのです。The 袋小路。

もちろん、細かく(あるいは丁寧に)切り出そうとするから時間がかかるのであって、雑多なものを適当に書き出すのであればそう手間はかかりません。たとえば不要そうなものを一気に「未整理」みたいな項目に移し替えるなら簡単です。

しかし、その作業には何やら本末転倒感があります。「重要なもの」を切り出すのは行為と意義が合っています。重要なものだから手間をかける価値がある。自然な流れでしょう。一方で「重要でないもの」を切り出すのはなんだか不自然です。だったらはじめから書かなきゃいいじゃん感がどうしても出てきます。

自分の認知と行為を合わせるためにも、できるだけ「重要なもの」対して操作を行い、「重要でないもの」は何も操作しない、という形に持っていけるのがよさそうです。

しかし、なかなかそれが難しいのです。

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