何より大事な「予防」とその3つの方法
AさんとBさんは新規勧誘の係をしていて、主にボランティア団体の幹部らが多数居住しているアパートの一室を根城としており、大学にはほぼ行かずに関連のカフェ店で手伝いをしていた。
こうなると、脱会させるなどを考えるが、そうそう簡単なものではないし、ミイラ取りがミイラになることもあるだろう。居場所を見つけ、行動を大まかに把握し、そのボランティア団体の背景を調べて両親に報告したが、親子関係は一方的に断絶され、状況は深刻であった。
堪らず両親がカフェ店に行ってみたが、逃げられてしまい、その後しばらくアパートに引き籠ってしまっていた様子であった。
また一方で新たな発見もあった。
AさんとBさんは共に行動しており、新規勧誘を行っていたが、その勧誘方法が大学周辺や校内で活動をするのではなく、SNSを使って勧誘のキッカケを得ていたのだ。
使用が確認されたのはInstagramで、良いコメントをしたりするなどして対象者とSNS上で緩やかな接触をはかり、心理的な距離を縮めておき、イベントなどに誘いだし、徐々に個別に勧誘をしていくという手の込んだ手法で、調査中に接触があった同大学の1年生が言うには、「何か宗教だろうなというのはわかったが、良い人であるから、それで縁を切るというのも嫌だというのが正直な気持ちだから、なかなか勧誘を断りづらい」と話してくれた。
これで私がAさんもBさんも脱会させて両親との関係を戻せればよいのだが、それができれば、今とは異なる仕事をしているであろうし、どうすることもできない葛藤を抱えることもない。できることは起きている事態を報告し、安否を確認するのみだ。
もしも最近流行りの退職代行みたいに脱会代行みたいな業者があればそれはそれでと思うのだが、こうしたものは本人が取り込まれてしまっているわけだから依頼自体が無いだろう。
また、SNSを勧誘側が利用することで、今後は大学だけではないSNSで繋がる者同士のやりとりを装おって、勧誘が増えるであろう。
何より大事なのは、予防である。
代表的な予防法は下記の通りだ。
- 氏名住所電話番号など、個人情報を書かない、渡さない、話さない
- 大学の場合は学生課など窓口に相談したり情報提供を求める
- SNSのアカウントを教えない
なんだそれだけか…と思うかもしれないが、信仰の自由がある以上、無理やり止めることもできないし、注意喚起を強くやって、予防に心掛けるしか方法が無いとも言える。
むしろ、何か現実的に有効な方法論があれば教えて欲しいところだ。
子育て中の親御さんには、世の中の危険をしっかりと親子で共有するのも良いだろう。心配事の9割はまず起きないと言われており、危険を教えてもオバケが出るぞと脅かしているだけという人もいるが、オバケが出ると言ってなんだ出ないではないかと笑い話になれば、それでよい。実際に勧誘する側はありとあらゆる手で勧誘を試みてくる。
企業や教員などの職と同様で、慢性的な人出不足は、カルトも悪質商法も同じなのだ。
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