16年前に始まっていた隠蔽計画。解散命令を見越し清算後の財産移転先を決めていた旧統一教会の巧妙

 

2009年に財産引き受け先が決められたウラ事情

ではなぜ2009年に清算時の残余財産の引き受け先になったのだろうか。それは警視庁公安部によって同年に摘発された「新世」事件への教団幹部たちによる恐怖であった。

この年は全国各地(大阪、和歌山、福岡)で霊感商法的手法によって風水グッズ、印鑑、水晶などを販売していた会社に対する摘発があったが、「新世」(東京都渋谷区)事件は異例の展開をたどった。先祖の因縁話で「命が危ない」と顧客を不安に陥れて印鑑を販売した霊感商法事件で、社長、営業部長、社員など7人が6月11日に逮捕された。全員が統一教会信者だった。

警視庁公安部は渋谷の会社へ捜索に入っただけではない。統一教会本部(東京都渋谷区松濤)の道路を隔てたビルにあった渋谷教会など教団施設への捜査も行われたのだ。もともとは1994年夏に警察庁警備部が宗教団体とくに統一教会とオウム真理教を監視対象にしたときから、教団への内偵が続いていた。その具体的な着手が「新世」事件であった。

教団幹部たちは、本部にも捜査が及ぶのではないかと危惧した。その時期に教団への解散命令も視野に入れて天地正教を利用することにしたのである。「新世」事件で逮捕者が出て渋谷教会などに捜索が入った直後に清算後の残余財産の移転先として天地正教が指定されたのである。

ただし教団幹部の見通しは甘い。おそらくこの秋にも東京高裁で地裁に続いて解散命令が出されるだろう。教団は最高裁に特別抗告をするだろうが、高裁の決定段階で清算手続きがはじまる。

東京地裁の決定文によると、教団の資産は令和4年(2022年)3月末の総資産は約1,136億円で、この総資産のうち現預金は820億円を占めている。清算人は清算法人に就職してから2月以内に少なくとも3回の公告をもって債権者に催告をする。債務が確定すれば、まずは現金、さらに空き地や所有車などから債務者に弁済していく。

教団が「宗教弾圧」で「礼拝もできない」などというのは内部結束のためのキャンペーンであって、信者たちが施設に籠城したりしないかぎり、そんな事態にはならない。債務弁済が行われ施設の売却は全国の土地などを売却したうえで、利用者の少ない施設から行われていく。

このプロセスはオウム真理教の清算手続きが終わるまで12年かかったが、さらに長期にわたると予測されている。

教団が解散となれば法人格が失われる。したがって教団本部などに固定資産税が課せられる。すべての清算が終わったときにどれほどの財産が残るのかは見通しが立たない。もし残余財産が確定しても天地正教に引き継がれるのは、少なくとも10年以上もあとになる。問題は教団関連組織が多いことだ。天地正教よりも複雑で巧妙な資産隠しはすでにはじまっていた。

(本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2025年4月25日号の一部抜粋です。続きをお読みになりたい方は、、初月無料の定期購読にご登録の上お楽しみください。このほか、1ヶ月単位でバックナンバーもご購入いただけます)

【関連】トランプが旧統一教会とベッタリ癒着これだけの動かぬ証拠。すでに石破首相へ「解散命令の取り消し」を指示済みか?
【関連】【精神科医・和田秀樹】「旧統一教会の“日本弱体化計画”は今も続いている」国民の学力低下、バカの増加が霊感商法より怖い理由
【関連】信教の自由があれば不法行為は許されるのか?解散命令に“逆ギレ”した旧統一教会「まったく的外れな主張」

この記事の著者・有田芳生さんのメルマガ

有田芳生さんの活動を支援する

 

初月無料購読ですぐ読める! 4月配信済みバックナンバー

※2025年4月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、4月分のメルマガがすべてすぐに届きます。
2025年4月配信分
  • 旧統一教会の財産隠し計画は16年前にはじまっていた(上)/有田芳生の「酔醒漫録」第113号(4/25)
  • 消費減税になびく政界はポピュリズムなのか/有田芳生の「酔醒漫録」第112号(4/18)
  • 初当選議員の行方と「衆参ダブル選挙」/有田芳生の「酔醒漫録」第111号(4/11)
  • 統一教会解散命令決定を読み解く(下)/有田芳生の「酔醒漫録」第110号(4/4)

いますぐ初月無料購読!

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2024年3月配信分
  • 「酔醒漫録」の世界/有田芳生の「酔醒漫録」号外(3/29)
  • 岸田政権の行方と解散・総選挙をめぐる攻防/有田芳生の「酔醒漫録」第63号(3/22)
  • 統一教会スラップ訴訟の敗北/有田芳生の「酔醒漫録」第62号(3/15)
  • 自民党「裏金問題」と今後の政局(下)/有田芳生の「酔醒漫録」第61号(3/8)
  • 自民党「裏金問題」と今後の政局(上)/有田芳生の「酔醒漫録」第60号(3/1)

2024年3月のバックナンバーを購入する

2024年2月配信分
  • 岸田総理の6月訪朝はあるのか/有田芳生の「酔醒漫録」第59号(2/23)
  • 安倍派裏金問題は脱税事件に発展するか(下)/有田芳生の「酔醒漫録」第58号(2/16)
  • 安倍晋三元総理が「裏金」廃止を提案した真相(上)/有田芳生の「酔醒漫録」第57号(2/9)
  • 統一教会「秘」文書にみる自民党工作(下)/有田芳生の「酔醒漫録」第56号(2/2)

2024年2月のバックナンバーを購入する

2024年1月配信分
  • 統一教会「内部文書」にみる自民党工作(上)/有田芳生の「酔醒漫録」第55号(1/26)
  • 宏池会解散で生き残りを図る岸田総理/有田芳生の「酔醒漫録」第54号(1/19)
  • 国会議員逮捕はさらに続くのか(下)/有田芳生の「酔醒漫録」第53号(1/12)
  • 国会議員の逮捕はあるのか?(上)/有田芳生の「酔醒漫録」第52号(1/5)

2024年1月のバックナンバーを購入する

image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

有田芳生この著者の記事一覧

ジャーナリスト、テレビコメンテーター。立憲民主党所属の元参議院議員(2期)。出版社に勤務後、フリージャーナリストとして「朝日ジャーナル」「週刊文春」など霊感商法批判、統一教会報道の記事を手掛ける。1995年から2007年まで、日本テレビ「ザ・ワイド」に12年間レギュラー出演。2010年には民主党から立候補、参議院議員となり、北朝鮮拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに取り組む。「北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実」(集英社新書)、「改訂新版 統一教会とは何か」(大月書店)など、著書多数。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 有田芳生の「酔醒漫録」 』

【著者】 有田芳生 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 金曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 16年前に始まっていた隠蔽計画。解散命令を見越し清算後の財産移転先を決めていた旧統一教会の巧妙
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け