日本は2055年「4人に1人が75歳以上」の時代へ。最新科学で「老化」はどこまで遅らせることが可能か?

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いわゆる「団塊の世代」の約800万人全員が75歳以上となり超高齢化社会を迎えることで、社会に様々な影響が生じるとされる「2025年問題」。そうなると、国民のほとんどが気に始めるのが「老化」です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、世界における「老化」防止の最新研究結果を紹介しています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「老化」は病?

2025年は団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が全員75歳以上となりました。今後65歳以上の高齢化はさらに進み、2043年まで増え続けると予想されています。

しかし、75歳以上に限ると、別の側面がみえてきます。

75歳以上の後期高齢者のピークは2055年で、全人口に占める割合は25%超。

4人に1人が75歳以上という…想像するだけで恐ろしい時代が到来するのです。

要するに、今の日本の最大の問題は、40代以上が8割を占める「超中年社会時代」をどう生き抜くか、です。

40代、50代、60代が、いかに健康寿命を延ばせるかどうかで、医療や介護の需要、社会保障費、労働力問題が大きく変わってきます。

そこで「老化」について最新の研究結果から、考えてみようと思った次第です。

老化研究は古くから人類の関心事で、不老不死への探求は歴史を通じて存在しました。

科学的なアプローチが始まったのは19世紀後半から。1882年にドイツの生物学者ワイスマンが「消耗仮説」を提唱したのが始まりだとされています。これは体の酷使や環境要因の蓄積が老化の原因とする説です。

その後は、細胞老化説、テロメア説、ミトコンドリア説、DNA損傷説など様々な老化の仕組みが蓄積され、「なぜ、老いるのか?」がわかってきました。それに伴い「老化は治療できる」との視点からアプローチする研究に移行。老化関連疾患の治療標的が明確になれば、健康寿命を医学的な見地から延ばすことが期待できます。

中でも注目を集めているのが、スタンフォード大学の研究者らが実施した縦断研究です。

この研究では、25歳から75歳までの108人の健康な成人を対象に、7年間にわたり血液、唾液、便などのサンプルを定期的に採取し、遺伝子、タンパク質、代謝物、微生物など135,000以上の生体分子の変化を詳細に分析しました。

解析の結果、加齢には非線形のパターンがあり、44歳と60歳の2つの年齢で生体分子に大きな変化が起こり、老化が加速することがわかりました。

さらには、これらの2時点で老化に関連する分子や機能経路も明らかになりました。40歳への移行期には、心血管系疾患、脂質代謝、アルコール代謝が変化。研究者らは40代は、健康的な生活習慣、特に運動習慣の重要性を指摘しています。

また、60歳では炭水化物の代謝に大きな変化が現れ、活性酸素が増加し酸化ストレスが発生しやすくなります。また、腎臓の機能の低下、心血管疾患のリスクの上昇、皮膚と筋肉の細胞分子数に変化が見られ、老化が加速します。

これらの変化を遅らせるには運動習慣が効果的。研究者らは60歳以降の運動の重要性を訴えています。

日本ではいまだに、生まれてからの年数=実年齢を重視していますが、世界の老化研究の最先端は、生物学的年齢や主観的年齢です。年齢は自分で決められる時代に突入しているのです。

いったい何歳まで生きてしまうのか? という長寿時代に「私」は生きているわけですから、できるだけ健康寿命は伸ばしたいですよね。

一方で、DNAに長寿遺伝子なるものも発見されていますから、老化を遅らせる生活をしたところで、100%健康寿命を延ばせるわけではありません。

それでもやはり、今日もいい日だったね、楽しかったね、って笑える方がいい。

大切な人との温かい穏やかな時間も、たくさんあった方がいい。

今年のゴールデンウィークは、生活見直し週間にしてみてはいかがでしょうか?

みなさんのご意見、お聞かせください。

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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