カタールとエジプトは現時点での調停の協力を拒否
冒頭のイランからの調停依頼があった際、ガザ問題で仲介の労を担うカタールとエジプトに相談したのですが、両国からは「調停を行うためには、イスラエルがその領土的野心と、イスラエル国民に対して暗示をかける“存亡の危機”という脅しを一旦取り下げ、話し合いのテーブルに就く意思を示す必要がある。しかし、残念ながらイスラエルは国際社会における孤立の深まりを逆手にとって一切の話し合いに応じるつもりはなく、ヒズボラの指導者たちを排除することでその影響力を削ぎ、イスラエルに対する安全保障上の懸念を排除できることを知ったため、とことん軍事的な解決を図ろうとするかもしれない。また、モサドによるハメネイ師の殺害の可能性にまで表立って言及し始めたことで、自らもう元には戻れない動きに出ようとしているように見える。イスラエルの暴走を止めることができるのは、トランプ大統領のアメリカ合衆国が力ずくでイスラエルを制止することしかないと考えるが、トランプ大統領にその気はないようだ。このような状況下で調停を実施することは、我々にとって実りのない自殺行為になりかねない。残念ながら現時点では協力できない」と言われました。
当のトランプ大統領はG7サミットを中座してワシントンDCに戻り、8時間とも9時間とも言われる時間、Situation Roomに籠り、対イラン戦略を練ったと言われています(これが連日継続されています)。
そこで協議され、方針が示された内容については諸説ありますが、方向性としては「イランとの核協議(By ウィトコフ特使)、つまり話し合いによるイラン核問題の解決を目指しつつ、いつでもバンカーバスターを用いたウラン濃縮施設への爆撃を行えるように作戦を作成し、実行に備える」という硬軟織り交ぜた対応になるようです。
まだ攻撃命令・作戦の実行を命令していないので、近日中に行われるアメリカとイランの7回目(6回目?)の協議を前に最大限の圧力をかけ、イランのアラグチ外相を協議の場に引っ張り出してくることを狙っての動きであると考えますが、イスラエルによる容赦ない破壊に直面しつつ、それを黙認どころか称賛しているアメリカとの協議において、イランの核開発(イランはずっと平和的利用のためと主張し続けている)を止めるということは考えづらいでしょう。
「ここ1週間ほどが大事だ」とトランプ大統領は発言していますが、“アメリカが納得する結果”(イランの無条件降伏?!)を得られなかった場合、本当に一線を越えてバンカーバスターによるイランへの直接攻撃を加えるのか否かは、今後の国際安全保障情勢を見るうえで、重要な分岐点となります。
バンカーバスターを用いるのは米軍のみであり、その使用はアメリカによるイランへの直接攻撃と誰の目から見ても明らかで、これはアメリカを再び中東情勢の泥沼に引き戻すだけでなく、中東全域を反イスラエルに替え、かつ親米国がことごとく反米に転換する危険性をはらんでいます。
この歴史的な転換と危機への回帰を、トランプ大統領は本当に決断することになるのでしょうか?
それについては、アメリカ政府内でも見解が分かれているようです。4月末・5月初旬に対イラン強硬派だったウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官が更迭されたことで、話し合いによる問題解決を主張するグループが主流になったと考えられてきましたが、今、イスラエルとイランの応戦が続く中、トランプ大統領の頭の中にアメリカによるイランへの本格的な攻撃が視野に入ったことに驚いているようです(とはいえ、随分、他人事のような言い方だなあと呆れておりますが)。
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