米国が「地獄を見る」のは確実。それでもトランプはイラン核施設にバンカーバスター弾を落とすのか?

Israel,-,June,15,2025:,A,Night,Sky,Over,Jerusalem
 

イスラエルによるイラン核施設への先制攻撃からおよそ10日。両国による激しい応酬が続く中、トランプ大統領がイランへの直接攻撃に加わるか否かが大きな注目を集めています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、トランプ氏の決断が中東のみならず今後の世界全体を左右する理由を解説。さらに国際交渉人として今現在の状況下で抱いている「偽らざる予感」を記しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:アメリカの中東回帰は世界を地獄に突き落とす?!-中東の勢力図を書き換えたいイスラエルの魂胆とイラン・アラブ連合の背後に控える中ロの影

トランプは世界を地獄に突き落とすのか。イスラエルの魂胆と中ロの思惑

「イスラエルとの停戦のための調停プロセスをお願いできないだろうか?」

そのような依頼が入ったのは6月15日。イスラエル軍がイランの防空網を破壊し、革命防衛隊の幹部を次々と殺害するとともに、ウラン濃縮施設をはじめ、イランの虎の子のエネルギー関連施設の破壊を続ける中、イラン政府高官から入った依頼の内容です。

直ぐにイスラエル政府にコンタクトを試み、同時にアラブ諸国とトルコに協力を要請しましたが、どこからも前向きな返答は得られませんでした。

イスラエルはアメリカを引きずりこみ、圧倒的な軍事力をもってイランの革命体制を崩壊させて20年来の懸念材料だったイランの核開発の恐れを無くし、それが一段落したらアラブ諸国への攻撃を通じて自国の勢力圏の拡大を図ろうとしていると思われるため、現時点ではいかなる停戦にも応じるつもりはなく、ガザおよびヨルダン川西岸地域の破壊とレバノンとシリアの支配、そしてあわよくば隣国ヨルダンやエジプトにまでちょっかいをかけて“イスラエルの拡大”を目指している可能性があります。

これが実現するか否かは“アメリカが本当に中東地域の泥沼に引きずり込まれるか”というポイントにかかっていますが、もしトランプ大統領が決断して、アメリカが誇るバンカーバスター爆弾とB2ステルス戦略爆撃機をイラン戦線に投入し、イスラエルによるイランへの全面攻撃を支持するような事態になったら、中東地域の非常にデリケートなバランスの上に成り立ってきた平和と安定は崩れ去り、大戦争に突入することになります。

これまでの対イスラエル戦争との違いは、サウジアラビア王国をはじめ、アラブ首長国連邦などスンニ派諸国が実質的にはイラン側に立っており、仲介役を引き受けていることもあって表面的には中立な立場を保とうとしているカタールやエジプトも、どちらかというとイラン側に味方しているように見えることです。

そしてそのイランとアラブ諸国の“連帯”の背後に、その仲直りを仲介した中国と、イランに影響力を持つロシアが控えており、アメリカが直接的に参戦した場合には、イラン側に立って参戦することもあり得るという、何とも言えない究極の緊張状態と代理戦争の様相がそこにあることです。

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