プーチンとネタニヤフが熟知している欧州各国の対応
イスラエル・イランの問題と大きな違いがあるとしたら、イスラエルはイランを敵と見ても、自国の一部とは考えないため、いろいろな攻撃手段を用いて核施設への攻撃を強行するのに対し、プーチン大統領とロシアにとっては、ウクライナは不可分なロシアの一部であり、“自国”への核攻撃や放射能汚染を起こしかねない行為は絶対に行わないという方針の存在です。
ただ共通点があるとしたら、ロシアもイスラエルも圧倒的な武力を用いて相手を叩きつつ、相手国内における様々な工作活動を実施して、相手国内の内部からの崩壊も狙っていることと、どちらも「欧州各国はいろいろと言ってくるが、戦況に影響を与えるようなことは何もしないことを知っている」ことです。
ゆえにロシアもイスラエルも、イランもウクライナも、その注意の先は欧州ではなく、トランプ大統領のアメリカ政府に向いているわけです。
トランプ大統領の思考は恐らくご本人も含め、誰も読み解けないものと思われますが、この緊張が世界各地で同時進行的に極限まで高まり、暴発寸前のところまで来ている状況で、皆、トランプ大統領の言動と一挙手一投足に注目し、少しでもアメリカの関心と支持を獲得しようと様々な工作を行っています。
トランプ大統領がいろいろと発言しつつ、アメリカによる直接的な軍事介入という最後のカードを切らずにチラつかせている限り、戦争が終結することはないですが、引き返すことができない状況に現在の戦争が発展することも、ギリギリのラインで止めることができるものと考えます。
そのデリケートなバランスを一気に崩し、負の波をドミノ現象で世界中に拡げる可能性があるのが、今、検討されているアメリカ軍によるイラン核施設(ウラン濃縮施設)破壊のためのバンカーバスターの使用という“直接的な軍事介入”の有無です。
これまでの政権の方針をトランプ大統領は非難しますが、評価できるとしたら、アメリカを中東から引きはがし、世界中の紛争に直接的に介入しない方針を作ったことだと考えますが、今、トランプ大統領がイランに対するバンカーバスターの使用に踏み切ることは、アメリカを再び海外の紛争の泥沼に引き戻し、多くの生命を奪う、まさに60年代から70年代のベトナム戦争への直接介入と泥沼化、そして敗北という最悪のシナリオの再来を予感させます。
そのような状況に陥ってしまった場合、アメリカのクレディビリティは地に落ち、復活してきたロシアと、台頭してきた中国によってオセロの駒が瞬く間にひっくり返され、かつ中国による台湾の一方的な併合を許し、アジアにおける覇権の確立を手助けすると同時に、ロシアによる“ソビエト連邦”の再興に繋がるプーチン大統領による中央アジア、バルト三国、中東欧に対する軍事攻撃と政治的工作を後押しすることに繋がると考え、大きな懸念を抱いています。
もしアメリカがイランに対する攻撃に直接参加することを選んだら、その先にあるのは(第何次かはもう分かりませんが)世界戦争による破壊と恐怖の拡大に他ならないと恐れています。
また読者でもある親友に怒られてしまいそうですが、私が紛争調停のお仕事を始めてから初めて感じる世界大戦の勃発危機の足音が刻一刻と近づいてきているように思います。
これを書いている最中に次々と召集の連絡が入ってきていますが、はてどうしたものでしょうか…。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年6月20日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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