露呈したG7の空洞化と世界の調整役としての役割の終焉
アメリカが攻撃に加わった場合、イラン政府は対イスラエルのみならず、アメリカに対する報復も宣言していますが、これはメディアがいう中東地域の米軍基地への攻撃はもちろんのことながら、以前からずっと言われているアメリカ国内の権益および市民に対するテロ攻撃も含むと考えられており、アメリカ国内では、現政権下での反移民工作と相まって、イラン系およびイスラム教系の工作員の洗い出しと摘発が加速されているようです(9/11の再発を防止するため)。
このような危機の高まりに直面して明らかになったのが、G7の空洞化と世界の調整役としての役割の終焉、そして欧州諸国の影響力の著しい低下です。
イスラエルによるイランへの大規模攻撃と、その後のイランとイスラエルの報復合戦は、カナダでのG7サミット開催時に発生しましたが、“法の支配”を訴えるG7各国が挙ってイスラエルの自衛権を尊重するという、耳を疑うような一方的な発言を行い、イスラエルによるサプライズ攻撃に対するイランによる報復を悪としたのは、誰の目から見ても明らかなダブルスタンダードであり、残念ながらG7各国の完全な日和見主義の現れです。
今回のイスラエルによるイランへの攻撃は、どの観点から見ても明らかな国際法違反であり、自衛のための行為とは見なされないと考えます。
宣戦布告もなく、ガザやヨルダン川西岸、レバノンやシリアへの攻撃と同じく、一般市民を巻き込む暴挙であり蛮行という点だけでも明らかな国際法違反ですが、どうしてそれをG7は挙って支持するのかについては、理解ができません。
G7でも日本政府は少なくともイスラエルによるイラン攻撃という行為を非難しただけ、他の欧米諸国メンバーとは一線を画したことは評価できると考えますが、国際法の祖と自他ともに認めるフランスも、それを発展させ、現在の国際的な規範に仕立てた英国、米国も、そして戦後、その遵守を徹底することを誓ったドイツも、ぶれることなく“法による支配”および“国際法の遵守”を世界に訴えかける立場にあるはずですが、今回、気持ちが悪いくらいイスラエルの行動を支持しているのは明らかな自己矛盾だと考えます。
イランによる核開発が、軍事目的に転用され、かつ伝えられているように9発の核弾頭が製造されるに至るという行為は決して看過できない行為だと考えますが、そのイランを非難し攻めたてているのは、核兵器に安全保障を依存する米仏英の核保有国であり、ロシアによる脅威に対抗するために、フランスと英国の核の傘の充実を謳い、欧州における核戦力のアップグレードを推し進める国々です。
なぜ英仏、そしてアメリカによる核兵器の保有とその充実はOKされて、他国が力の充実を図ろうとしたら非難し、それを潰そうとするのか?
アメリカ政府による執拗なイランの核開発阻止に向けた主張は何度聞いても異様に感じますし、トランプ第1政権時にアメリカがイラン核合意から離脱した後、英仏独はその合意に留まり続け、イランに対して何らかの働きかけを行えた、行うべきだったにも関わらず、実質的に何もしなかったのに、今になってアメリカに倣って大騒ぎしているのは、非常に滑稽に映り、かつ欧州の時代の終わりを鮮明に感じる事態になっています。
欧米としては懸念すべきは中国の急激な核戦力の拡大姿勢の方でしょうし、旧ソ連圏外におけるロシアの核の脅威の拡大だと考えますし、イランよりは北朝鮮の核開発とその背後に中ロがしっかりと控えていることだと考えるのですが、なぜ今、すでに煮えたぎりつつある中東地域の火に油を注ぐような行為に出るのか、不可解と言わざるを得ません。
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