米国が「地獄を見る」のは確実。それでもトランプはイラン核施設にバンカーバスター弾を落とすのか?

 

「最低限の礼節を欠く」と怒り心頭のアラブ諸国

皆さんもご存じの通り、そして今、テヘラン市民が北へ向かって避難していますが、そこには隣国アゼルバイジャンがあり、そこには今でも火種がくすぶり、いつ再発火するか分からないナゴルノカラバフ、そしてトルコをまたぐ形でウクライナ、そしてロシアへとつながる道が存在します。イランに欧米諸国が攻撃を加えるような事態が起こった場合、それはロシア・ウクライナ戦争との接続の危険性の高まりを意味します。

もし今は静観を決めつつも、イスラエルの蛮行に対する国民の怒りが爆発し、いつイスラエルとの戦いを始めざるを得ないかの頃合いを判断しなくてはならないアラブ諸国は、すでにイスラエル・イラン双方のミサイルが自国の領空を侵犯し、かつ事前のお伺いもなかったことに対して「最低限の礼節を欠く」と怒り心頭で、特に予告なく攻撃を行ったイスラエルに対しては怒りが爆発寸前という情報が入ってきています。

もし何らかの偶発的な事態、例えばイスラエルが発射したミサイルがサウジアラビア王国の領内に堕ちて被害が出たというような事態が起こった場合には、全地域を巻き込んだ終わりなき戦いが始まることを意味します。

実際にサウジアラビア王国、アラブ首長国連邦などは軍事的な対応のための備えを始めていますし、カタールについては外交的なプロセスを行う準備をしつつ、万一の場合に備え、防衛協力をアラブ諸国に訴えかけているとのことです。

そこに支援の手を差し伸べているのが、中国とロシアです。アラブ諸国の防衛のための支援を両国が行っていますし、イランに対しては軍事的なサポートを行うものと思われます。さすがに核兵器の提供はないと思われますが、メディアで頻繁に指摘されるようなイスラエルとイランの軍事的な装備の差を埋めるべく、動くのではないかと思われます。

そしてそれと並行して、イスラエルに圧力をかけるべく、地中海対岸の東アフリカ諸国(日本が自衛隊機を待機させるジブチ含む)におけるプレゼンスを、元ワグネルの部隊と装備などを用いて強化し、アメリカが送り込む空母攻撃群に対するにらみを利かせるという作戦に出るものと考えられます。

この中ロの動きが加速するのが、アメリカがイランに自ら攻撃を加えたことが確認された瞬間です。

イスラエルからの要請に応える形でアメリカがバンカーバスターを使用してイランを攻撃した暁には、イスラエルは地中海を挟んだ東アフリカ諸国と、イランとの間に位置するアラブ諸国からの攻撃の挟み撃ちに遭う可能性が高まり、そこに瀕死のイランや、イスラエルに怒り心頭のトルコが加わるような事態になれば、東アフリカから中東、ペルシャ半島、そして中央アジア、さらにはロシア・ウクライナにまたがる広域を巻き込み、かつその影響は地中海沿いに南欧に広がり、同時にロシア・ウクライナ戦争の影響が東から欧州に及ぶことが予想され、そうなると日和見で、いろいろと大国ぶってものを言っても実際には何もしない欧州の中枢を戦争の波が襲うことになるかもしれません。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 米国が「地獄を見る」のは確実。それでもトランプはイラン核施設にバンカーバスター弾を落とすのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け