7月3日の公示から2週間あまり、いよいよ投開票を20日に控えた参院選。各候補者とも「最後の訴え」を叫び続けていますが、未だ投票先を決めかねている有権者も少なくないのが現状です。7月から全体構成をリニューアルしたメルマガ『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、自民党の変わらぬ金権体質を改めて批判するとともに、新興勢力の支持拡大や選挙戦へのSNSの影響力増大が何を示しているかを考察。さらにどの党に投票すべきか迷っている人にとって参考となりうるサイトを紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:参院選特集(第3回)「結局、誰に投票したらよいのか?」
プロフィール:辻野晃一郎(つじの・こういちろう)
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。
参院選特集(第3回)「結局、誰に投票したらよいのか?」
いよいよ参院選が明後日に迫りました。各社からいろいろな情勢分析が出ていますが、果たして結果はどうなるのでしょうか。
終盤の情勢分析では、自公与党が過半数維持のために勝敗ラインとしている50議席を確保するのは難しく、惨敗は免れないというのが大方の予想となっています。
この連載の初回で、私はこの参院選を、石破政権そして自公政権を終わりにするきっかけにしなければならないと主張し、その理由も縷々述べました。まさに、そのような流れになりつつある情勢をとりあえずは喜ばしく思っています。
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しかし、選挙は実際にフタを開けてみないことにはわかりませんから、結果を踏まえた論考は次回ということにして、今回は投票日直前の思いを少し綴ってみたいと思います。
ちなみに、私は会社経営を通じて主に経済活動を行っている立場です。にもかかわらず政権与党を批判するのは賢いことではないかもしれません。もちろん、得になることなど何一つありません。しかし、そのような損得勘定で政治批判を止めてしまうのは、一経済人としても一国民としてもあまりにも無責任です。
そして、そのような主張の真逆が、まさに企業団体献金のようなものだと思います。どのような形にしろ、政治家に金を渡して、自社や自団体の活動への見返りを期待するのが企業団体献金の実態だとすれば、それは贈収賄とも言えるものです。
過去のリクルート事件や佐川急便事件などは、まさにその実態を可視化したものでした。その反省の元に、当時の自民党は企業団体献金を廃止する方向で見直すことを一旦決めました。その代わりに導入されたのが政党交付金です。
しかしながら、30年以上の歳月を経ても、企業団体献金は廃止されるどころか、巧みに姿形を変えながら継続され、今や自民党は過去の自分たちの決断すら否定して、企業団体献金と政党交付金の二重取りを開き直って正当化している始末です。
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自民党の裏金事件は、政治と金の問題をあらためて問い直し、政治資金規正法や政党助成法を見直すきっかけとすべきものでした。しかし、自民党にそのような自浄作用を発揮する機運は皆無で、検察の忖度や機能不全も手伝って、実効性のある政治改革が進むことはありませんでした。しかしその結果、腐敗政治の根深さを広く国民に知らしめ、国民を覚醒させるきっかけとなりました。
前回取り上げた「参政党」のような新興勢力が急速に支持を広げている現状や、東京選挙区で7議席(補選を含む)に対して32人もの候補者が乱立していること、さらに大阪選挙区でも4議席に対して19人が立候補している状況は、自公政権だけでなく、その堕落や腐敗を食い止められない既存野党に対しても、多くの国民が失望し、強い不満を抱いていることの表れだと思います。
また、選挙に対するSNSの影響が盛んに取り上げられていますが、デマ情報の問題や切り取りによる印象操作などの問題が山積する反面、これまで表に出てこなかったり、表に出ても「陰謀論」として一笑に付されてきた情報の中に真実が隠されていたというようなことに一般の人々が徐々に気付き始めており、そのためのチャンネルとしてSNSが機能していることも事実です。
以前に、「オープンソース・インベスティゲーション」の重要さについて論じたことがありますが、まだまだ初心者レベルではあっても、SNSを上手く活用して真実にたどり付く人が増えていくことは決して悪いことではありません。今回の選挙を見ていると、世の中にそのような変化が出てきていることも実感します。人々が、「なんだ、自分たちは権力やマスメディアに騙されてきたんだ」と気付くことは重要です。
本来は、権力のウソを暴くことがマスメディアの重要な役割の一つでしたが、今はマスメディアも権力に加担する存在としてその機能をほとんど果たしていませんから、一人一人が自助努力するしかありません。
今回の参院選で自公が惨敗すれば、さすがに石破首相は退陣するしかないでしょう。仮に居座ったとしても、秋に向けた衆院解散は免れないと思います。そうなると混乱のままにまたすぐに総選挙ですが、今後、他の自民党の有力者が出てきて連立政権が組み直されるのか、あるいはついに自民党が割れて政界再編になるのか、今回の参院選で自公が惨敗する影響は図り知れないと思います。
最後に、どの党に投票するか迷っている人にとっては、以下のようなサイトもあるので参考にすると良いと思います。特に各党の政策を比較するような場合に便利です。ただし、政党が掲げる政策は、ただ掲げているだけで一向に実現しようとしていないものも多いので、これも鵜呑みにするのは注意してください。
来週は、本連載の最終回となりますが、参院選の結果を踏まえて、今後の日本の政治についてさらに考えてみたいと思います。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年7月18日号の一部抜粋です。次週の第四回および辻野さんと読者のQ&Aコーナーなどに興味をお持ちの方は、この機会にぜひご登録ください)
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