石破首相が浸りきっている「自己犠牲」の物語
こう考えてくると、石破首相が「続投」にこだわっている真の理由も見えてくる。
国家の富を外国主導の枠組みに大量投入する。本来、主権国家としてはあるまじきことだ。これを受け入れるとしたら、国民の目を眩ませるよりほか手がない。自らの政権下であれば、記者クラブをコントロールし、「日本の利益にも、アメリカの利益にもかなう」と主張し続けて、世論を前向きの評価に誘導し続けることもあながち不可能ではない。
しかし、次の政権が誕生し、その政権が石破政権に否定的な立場であるなら、どうか。合意内容が批判的な観点から精査されるだろう。石破首相が最も恐れるのは「トランプのディールに屈した売国的な合意」とのレッテルをはられ、歴史的な汚名を着せられてしまうことだ。
ひとまずここは、政権を死守し、トランプ大統領が関税「15%」の大統領令を発出するのを見届ける。それから先は「行けるところまで行く」。今の石破首相は、そんな腹積もりに違いない。
党内からの総裁交代要求が強まっているとマスメディアは騒いでいるが、石破首相を追い詰めるべき28日の両院議員懇談会はチラホラと空席が目立ち、4時間半もかけて64人が次々と発言したわりには、“ガス抜き”装置となった感が否めなかった。一部メディアで囁かれるように、間もなく石破首相が退陣するのが既定路線だという党内の空気のせいなのだろうか。
ここへきてようやく腹が据わったのか、誰が何と言おうと、石破首相は日々、同じ発言を繰り返す。
関税交渉の合意を着実に実施していかなければならない。
一切の私心を持たず、国民のため、国の将来のために自分を滅してやる。
一部メディアの世論調査で「辞める必要はない」との声が「辞めるべき」を上まわる結果が出たことにも後押しされ、石破首相は自らを鼓舞するために紡ぎだした“自己犠牲”の物語に浸りきっている。
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