「高市内閣=自民党」ではない多くの日本人の感覚
それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…と、今度は五七五で嘆いてしまいますが、これだけ国益を損なった結果が「内閣支持率の上昇」って、あたしには意味が分かりません。たとえば、前回の調査から内閣支持率が5.5ポイントも上昇した共同通信の世論調査の個別の設問を見てみると、「政治とカネ」の問題解決への意欲を感じるかどうかの設問では「感じない」が64.7%で、「感じる」の27.6%をダブルスコアで上回っています。
また、クマによる各地での被害に対する政府対応についての説問では「遅い」と「どちらかと言えば遅い」を合わせて65.0%に上りました。それなのに、内閣支持率は5.5ポイントも上昇しているのです。
このように個々の設問では高市内閣に批判的な回答が目立つのに、総合的な内閣支持率では前回より大幅に上昇って、意味が分かりません。
一方、朝日新聞の個別の設問を見てみると「自民党は国民の声を幅広く聞いているか」は「聞いている」が34%で「聞いていない」が53%、「政治とカネの問題に対する自民党の取り組みを評価するか」は「評価する」が20%で「評価しない」が68%でした。
「政治とカネ」の問題に対する回答は共同通信の調査とほぼ同じですが、こちらの設問では主語が「自民党」になっていました。そして、あたしはようやく気づいたのです。多くの人々の感覚では「高市内閣=自民党」ではないのだと。
…そんなわけで、とにかく日本初の女性首相になりたかった高市早苗氏は、数合わせのためになりふりかまわず日本維新の会と連立を組みましたが、維新は維新で沈没することが分かっている泥船に乗るつもりなどありません。そのため、風向きが怪しくなれば自分たちだけスタコラサッサと逃げられるように、これまで公明党の指定席だった国交大臣のポストを拒否し、党内から閣僚を出しませんでした。その結果、全閣僚が自民党議員という高市内閣が誕生したのです。
そして、その顔ぶれを見てみると、なんと7人も旧安倍派の裏金議員が勢ぞろいしていたのです。党内人事でも、旧安倍派の中心人物として、裏金問題や統一教会問題だけでなく、加計学園問題でも暗躍した諸悪の根源である萩生田光一氏を幹事長代行に据えるという反省のハの字もない最悪の人事を強行した高市首相でしたが、閣僚人事でも自分を首相に押し上げてくれた旧安倍派の裏金議員たちへの見返りとして、閣僚ポストを大盤振る舞いしたのです。
つまり高市首相は、自民党の裏金問題が原因で3連敗した昨年の衆院選と今年の東京都議選と参院選の責任を石破茂前首相1人に押し付け、「石破おろし」に便乗し、自分の野望のために旧安倍派の裏金議員たちとグルになり、裏金問題を「もう終わったこと」にするための壮大な茶番劇を繰り広げたのです。
そして、その結果、世論調査の「政治とカネの問題に対する自民党の取り組みを評価するか」という設問で「評価しない」が68%となっても、その「政治とカネ」の問題を起こした自民党の裏金議員だらけの高市内閣の支持率は上昇する…という摩訶不思議なイリュージョンが巻き起こったのです。
安倍元首相の発言がトリガーとなって人の命を奪うことになった森友学園問題も、萩生田光一氏が深く関与していた加計学園問題も、安倍元首相が「参加者は募ったが募集はしていない」という迷言を発した桜を見る会の問題も、未だに何ひとつ解明されていません。こちらも萩生田光一氏が深く関与した統一教会問題や裏金問題も、まったく解明されていません。
これらすべての問題の中心人物は安倍元首相ですが、その中心人物が亡くなったことで、これらの問題に関与していた自民党議員たちは、全員が「死人に口なし」で、これらの問題を「もう終わったこと」にする方向へと突き進んだのです。
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