高市首相が“自分を良く見せたい”一心で損なった日本の国益。Google日本元社長が指摘する、中国の戦狼外交を蘇らせた「存立危機」発言の致命的な構造

 

日本人特有の「親米右翼」という立場を象徴する政治家

また、総務大臣時代に放送局への圧力をかけたことを示す内部文書を、2023年3月の国会で野党議員から追及されたことがありましたが、その時に、根拠を示すことなくその文書を「捏造」と断定したことがありました。

文書の中には、安倍政権下で首相補佐官だった礒崎陽輔氏が、放送法の政治的公平性をめぐって、新たな解釈を加えるよう総務省側に働きかける経緯が記されていたのですが、高市氏は、同僚議員として懇意にしていた礒崎氏について、「礒崎さんという名前、もしくは放送行政に興味をお持ちだと知ったのは今年3月になってからです」と虚偽答弁を行っています。

さらには、「文書が捏造ではないことが判明した場合には大臣(当時は経済安保担当大臣)も議員も辞めるか」、と問われた時に「結構ですよ」と啖呵を切ったにもかかわらず、その後総務省が当該文書を正式文書と認めても、結局何事もなかったかのように続投しています。

これら一連の身勝手で不誠実な対応も、すべて先に指摘した「自分を良くみせるための気の強さ」のなせる業と感じますし、そのことは、公明党が連立離脱を表明した時の反応からも感じました。彼女が真っ先に述べたのは、「仮に自民党総裁が自分ではなくとも、連立を離脱するという結論は変わらない、と公明党から言われた」という、自分が連立離脱の原因ではないとするアピールだったからです。

別の面で高市氏の危うさを強く感じたのは、先月トランプ大統領が来日した時でした。マスメディアを始め、高市氏の対応を称賛する意見が目立ちましたが、私の感想は真逆でした。

特に、大統領専用ヘリのマリーン・ワンに同乗して米軍横須賀基地を訪れ、原子力空母ジョージ・ワシントンの上で大勢の米兵に囲まれ、トランプ氏に紹介されて片手を高く掲げてぴょんぴょんと飛び跳ねてみせた時には、日本人として屈辱的な思いすらしました。

マリーン・ワンが飛んだのは、日米地位協定という戦後一度も改訂されていない不平等条約の象徴でもあり、日本の航空機が立ち入ることのできない横田空域ですし、自国に駐留する外国の軍隊を前に有頂天になってはしゃぐ姿を見ながら、我が国が米国の従属国であることをまざまざと見せつけられるようで、決して良い気分ではありませんでした。

もちろん、過去はともかく、今は大切な同盟国ですから、一貫してトランプ氏をいい気分にさせた高市氏の手腕を評価する人たちは多いようで、私のように感じる日本人は少数派なのかもしれません。しかし、米国との関係において本来我が国が目指すべきは、従属的な同盟関係ではなく、対等な同盟関係です。

いずれにしても、海外の人たちにはなかなか理解してもらえない日本人特有の「親米右翼」という立場を表向きは象徴する政治家なのでしょう。

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