高市首相が“自分を良く見せたい”一心で損なった日本の国益。Google日本元社長が指摘する、中国の戦狼外交を蘇らせた「存立危機」発言の致命的な構造

 

トランプから完全に梯子を外されたに等しい高市政権

まず日本からは、中国総領事の書き込みに対し、従来の「遺憾に思う」以上の強い反応を引き出しました。日本側がいつもよりも強気に出た背景には、暴言が限度を超えていたということもあるでしょうが、高市政権や自民党としては、先月末のトランプ大統領来日時に、日米同盟の強さを内外にアピールすることができたという自信があり、米国の後ろ盾があるという思いが背中を押したのではないでしょうか。

ところが、高市氏の発言を巡り日中関係が緊張していることについて、FOXテレビのインタビューでその感想を聞かれたトランプ大統領は、なんと「同盟国の多くは友人ではない」と応えたのです。

さらに、「同盟国は米国に軍事費をまともに払っていない。貿易面でも米国を不利にする。中国のほうがマシだ」などとも発言しました。すなわち、高市政権としてはあれだけ下手に出て媚を振りまき、対米投資にしても米国製武器の購入にしても、米国側に一方的に譲歩したにも関わらず、トランプ大統領からは完全に梯子を外されたに等しい発言をされてしまったのです。

つまり、「日本の首相が中国から首を斬られようが知ったこっちゃない」と突き放されてしまったわけです。言い換えれば、「中国が台湾侵攻をしても米国は介入しない」と言ったに等しいとすら解釈できます。

高市政権からすれば、赤っ恥をかかされたわけで、逆に中国としては、思いがけずこのような発言をトランプ氏から引き出してさぞやほくそ笑んだことでしょう。トランプ氏は高市氏を擁護するどころか、中国側に立つような発言をしたわけですから、それもあって中国は一気に強気に出てきているのだ、と解釈すべきだと思います。

すでに日本への渡航自粛、民間経済イベントのキャンセル、海産物の輸入停止などを次々に仕掛けてきていますが、しばらくは嫌がらせのようなことを畳みかけてくるのではないでしょうか。

ところで、トランプ氏は、このところMAGAの分裂や支持者のMAGA離れもあって苦境に立っていますが、その話はまた回を改めたいと思います。

(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年11月21日号の一部抜粋です。「ソニーが逃がした魚は大きかったという話」と題した「今週の一言」、 ネットフリックス映画『A HOUSE OF DYNAMITE』を紹介する「今週のオススメ!」、辻野さん自身のメルマガを書き続ける2つのモチベーションを記した「読者の質問に答えます!」、「インターネット記念日」を取り上げた「スタッフ“イギー”のつぶやき」を含む全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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