話の筋が通らない「クルド人はケシカラン」という言説
そうなのですが、報道ではまるでコンビニや歯医者さんのある静かな生活圏が侵されたように言われていたのですが、実際は違うのです。問題のローソンというのは、実は河口湖駅とその前にある高速バスターミナルから、徒歩2分の至近距離にあるのです。ですから、閑静な住宅街でも何でもなく、駅前商店街の駅近ゾーンになります。
一番の問題は、河口湖駅の駅前からは富士山は見えないことです。つまりは、結局のところは、駅を降りたら、このローソンが一番「手っ取り早く」富士山が見える場所ということになるのです。そうなれば、人がこの場所へ向かうのは仕方がないということになります。
そもそも、騒動の後、ローソンはものすごい高いところにロゴの看板を出したり、結構商魂を出すようにしていますし、とにかく駅から商店街にかけての人の波は凄いので、もうそれが前提になっているようです。
そもそも、河口湖周辺の外国人観光客は、FUJIQこと富士急グループがマネタイズをしていて、富士急ハイランドにしても、鉄道の富士急行、そして富士急バスなどは、増便増発をしてビジネス的に成功しているわけです。
そして、富士急と言えばオーナー家の堀内家は、自民党に深く食い込んでいるのです。ですから、実際に河口湖の現地では、儲かりこそすれ、オーバーツーリズムで困っているというムードは消えています。つまり「大迷惑だ」というのは、ほとんど幻想なのです。
外国人問題の中で、一番強烈なトラブルという感じで報道されているのが西川口のクルド人です。産廃を扱っていて迷惑だとか、トラックなどで積載量オーバーの運用がある、あるいは内部抗争をしている、などと散々な言われ方をしています。
この問題ですが、産廃に関してはこれは日本社会の陰画という面が強いのです。産廃処理は公害を発生させるので処理場の立地は大変です。人口密度の低い場所に立地させると自然を破壊します。一方で人口密度の高い場所ですと、異臭や騒音などの苦情の原因になります。車両の出入りも問題になります。
そんな中で、以前は反社勢力が法律のグレーゾーンで営業し、行政も黙認するような状況が状態化していたわけです。ですが、時代の流れとともにコンプラとか、規制強化などでそうしたグレー対応も行き詰まったケースが多いようです。その一方で、コストについては、様々な理由から十分に払えないという流れもあります。
こうした産業を取り巻く環境が悪化した中で、一部脱法的な運用も含めて廉価でサービス提供しているクルド人の産廃というのは、地域経済の中で重宝されているということはあると思います。
そうした状況を全てすっ飛ばして、クルド人がケシカランというのは話の筋は通らないと思います。
さて、そのクルド人ですが、そもそもクルド人の居住しているのは、イラク、シリア、イラン、トルコの4カ国に及んでいます。ですが、来日しているのはほぼ100%がトルコ人です。これには明確な理由があります。それはトルコと日本は相互にビザ免除協定を結んでいるからです。どうして、ビザ免除になっているのかというと、日本=トルコ関係がほぼ最恵国扱いになっているからです。
ほぼ最恵国というのは、お互いに巨大文化圏の周縁にあること、欧米の文化圏との関係ということに絞っても周縁にあり、なおかつ非キリスト教国だということがあります。また、明治以来の友好関係もあります。
さらに言えば、巨大帝国を敗戦によって畳んだ歴史が共通しているということもあります。トルコはオスマン帝国の版図を、第一次大戦の戦敗により放棄。日本も第二次大戦の戦敗によって大日本帝国の海外領土を放棄しており、境遇が似ています。
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