帰化要件の厳格化で「敵国の工作」が容易になるという皮肉
一方で、日本国籍への帰化要件を厳しくするという「思いつきの政策」も進められているようです。理由は単純で、永住権の認定には日本国内居住「10年」を要求しているのに、帰化の場合は「5年」というのは逆転しているからというのです。これも非常に妙な話です。
まず、国籍を変えて日本人になろうというのは永住とは比べ物にならない重い判断です。ほとんどの場合は、日本人になったら日本に住むことになるわけで、そうした日本人になって日本に住む覚悟という意味では帰化は永住権よりずっと重いはずです。
だからこそ、5年で良いことにしていたわけで、それを10年に延長というのは妙な話です。5年が10年になることで、困るケースも色々と出そうです。例えば国際結婚で来日した場合、結婚して比較的すぐにお子さんが生まれても、5年で帰化できれば、お子さんが小学校に上がるまでには親御さんとして日本人になれるわけです。その場合に10年というのは長すぎます。
それよりも何よりも、今回の報道で知ったのですが、法務省によると、2024年の国籍取得の申請者数は1万2,248人で、同年中に許可されたのは8,863人だったそうです。つまり年間の帰化というのは、9,000人に満たないのです。
今、日本では、年間160万人が死亡する一方で、出生数は60万台に下がっています。つまり、毎年100万人の人口が減っているわけです。
だったら、これを補うために移民の中から日本人を増やす、そうした決断へ全振りするという時期に来ているとも言えます。その場合に、人口減を補うのであれば、少なくとも数十万人の帰化があってもいいという考え方が成り立ちます。100万丸々は無理でも、数十万であれば多少事態は改善します。
ですが、実態は8,800人、これでは、人口減は加速するばかりです。維持できない市町村が加速度的に増加して、海岸線や離島は荒廃、結果的に敵国の工作は全く容易となる中では安全の保障が破綻していきます。
そんな中で、8,800人しかいない年間の帰化者をもっと減らそうというのですから、これでは敵国のスパイに籠絡されていると言われてもおかしくない話です。
いずれにしても、外国人問題と言われている様々な事象については、詳しく見ていくと全く問題ではなかったり、本質を外した議論がされているケースが多いように思われます。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年12月9日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「迷走する米価、持続可能な政策を考えるとき」、人気連載「フラッシュバック80」もすぐに読めます。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ
初月無料購読ですぐ読める! 12月配信済みバックナンバー
- 【Vol.616】冷泉彰彦のプリンストン通信 『外国人問題とは何かを考える』(12/9)
- 【Vol.615】冷泉彰彦のプリンストン通信 『高市政権の立ち上がりへの評価』(12/2)
image by: Hiroshi-Mori-Stock / Shutterstock.com









