中国が主張する「琉球人は先住民族」の無理筋
この問題は改めて論じたいと思いますが、今回の状況の中で、中国共産党が琉球は先住民というような発言をしています。これは事実として間違っており、スルーすることで既成事実になっては大変です。
琉球王国は確かに薩摩と明朝(のち清朝)に両属していましたが、基本的には独立国であり、薩摩への従属と中国への朝貢はイコールであったはずです。それはともかく、問題は琉球の言語と文化であり、とりわけ言語は明らかに日本語です。
柳田國男の言語周縁論などをはじめ多くの言語学者、民俗学者が指摘しているように、琉球方言は音韻も文法も語彙も日本語であり、日本語の古語を反映したものです。漢語とは全く無関係ですし、独立言語でもありません。また、文化については一部に台湾等の西太平洋的な海洋信仰があるものの、メインの祖先崇拝と自然感は日本神道そのものです。
ですから、アイヌなどとは異なり、琉球は日本であって琉球の人々は先住民ではありません。このことは、日本の国のかたちの根源に関する問題であり、断固として譲歩はできない問題です。沖縄県内には琉球独立を考えている人々が結構な割合で存在しているのは事実ですが、彼らとてこの問題に異論を唱えることはないと思います。
また、沖縄には日中の係争が激化するのは困るし、トラブルの要因の一つが在沖米軍基地だとして、台湾海峡におけるパワーバランスの現状維持を支持しない人もいます。ですが、そうした人々も「琉球人は日本人」ということに異論は唱えないでしょう。
この問題は、将来にわたって禍根を残すことのないように、公教育でもまた多くのメディアなどでも徹底的に発信が継続されるべき問題です。
この他にも、尖閣の問題、日中条約の問題、台湾有事の問題など、様々な論点についてもう少し議論を深める必要を感じています。引き続き、議論を続けて参りましょう。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年12月16日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週の論点「利上げ直前の日銀、一つの大きな不安」、人気連載「フラッシュバック80」もすぐに読めます。
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