日本が警戒する「台湾有事」との決定的なズレ。中国の「軍事演習」が突きつけた厳しい現実と米国の「冷徹な計算」

 

軍事演習を解説したCCTVのある番組では、「演習を重ねるごとに台湾島にどんどん近づいている」ことも指摘された。

演習後、中台のネットで大きな話題となったのは、中国軍の無人機のカメラがとらえたとされる台湾のシンボル、「台北101」の映像だった。

「台北101」は、101階建ての高層ビルで、かつては世界一高いビルと呼ばれた。無人機のカメラがそれをとらえたということは「このランドマークはいつでも攻撃可能」というメッセージとなる。

中国側が「台北101」の映像を公開した直後から、台湾のネットでは、「フェイク」「AI生成画像」との書き込みがあふれたのも無理からぬことだろう。

私はこの論争に興味はないが、中台の応酬が象徴しているように、アメリカが背後にいようといまいと、もはや台湾側の守勢はどうにも覆せないようなのだ。

とくに今回、中国側の強い反発を招いた台湾への武器売却と重ねて考えると、その傾向は顕著である。

米誌『ニューズ・ウィーク』は、記事「トランプ政権、台湾に「約111億ドル」の武器売却承認──「安定化」のはずが…米中に火種?」の中で、兵器の内訳を〈高機動ロケット砲システム(HIMARS)とM109自走榴弾砲で各40億ドル以上、対戦車ミサイルのジャベリンやTOWなどで7億ドル以上などが含まれる〉と報じている。

何か聞き覚えのある名前が並んでいると感じるのは当然で、ウクライナにも大量に供与されてきた武器と重なるからだ。

以前であれば戦闘機F-16などが話題の中心であったが、今回は違う。

その理由を『ニューズ・ウィーク』は、〈武器の携行式、小型化、低コスト化を進めて「非対称戦」能力開発を求めている〉と解説している。

しつこく繰り返せば、「非対称戦」の能力開発のための武器の小型化なのだ。

この意図をさらに少しわかりやすく解説すれば、「(中国が)侵攻すれば、代償を払わせる」というメッセージだ。

つまり、侵攻を跳ね返し、阻むというものではなく、まして撃退のための武器ではない。持ちこたえることや相手に少しでもダメージを想像させることが目的だ。

今日のウクライナは明日の台湾どころの話でもなくなっているようなのだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年1月4日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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