リベラルから中道への変遷
1996年の旧民主党の結成に至る約1年半の議論の中では、左右対決軸が無効であるのはもちろんのこと、94年末に小沢一郎が作った新進党の「保守2大政党制(旧保守=自民 vs 新保守=新進)」も虚妄であって、「保守=自民 vs リベラル=民主」の基本軸を形成することを通じて政権交代を目指すことが目標とされた。この時に私が作成して配布した図が、近刊の奥健太郎・中島政希編著『民主党史』(ミネルヴァ書房)にも収録されているが(同書P.73)、それは鳩山由紀夫に代表される自民・さきがけなどの「保守リベラル」、横路孝弘・仙谷由人ら社会党出身の「社民リベラル」、菅直人・海江田万里ら市民派の「市民リベラル」をリベラルという共通分母で括ったものとして「民主リベラル」結集というイメージを表していた。それが、1年半後に新進党からバラバラと離党者が出てこちらに合流してきて民主党が再結成された時には、早くも「リベラル」が消えて「民主中道」を名乗った。私はその時に個人的に随分働きかけをして「中道」というのは止めてくれないかと言って回ったが聞き入れて貰えず、それからこの党に半ば興味を失ってしまったのだった。
その後、民主党は民進党になり立憲民主党になったけれども、「中道」幻想はこの党にずっと付き纏った。それでもまだ党名に「民」や「民主」の語が残っているのがせめてもの救いではあったのだが、今日に至り遂にそれも消えて「中道」そのものに成り果てた。これでは高市の保守どころかそれを超えた右翼路線への対抗軸を樹てることは出来ないし、上述のようにこの言葉には「左」を切るという意味が含まれているので、リベラルと左翼(の残党)が手を組んで少しでも対抗力を強めるという戦術も取らないだろう。
「保守=自維 vs 中道=立民新党」という選挙の何が面白いのか私には分からないが、それでもまあ「中道改革連合」が奮闘して高市与党に過半数を与えないよう頑張ってくれることを祈るばかりである。
《参考資料》野田と斉藤の「中道」論
立憲の野田は会見で「中道とはどのような考え方なのか」と問われ、こう答えた。
「どちらかというと大上段に構えて勇ましいことを言うような政治に対抗して、国民の暮らしに直結したことをコツコツと訴え、実現をしていくという現実生活に根ざした、そういうところに中道の意味があると思いますし、従来の他の世界各国の中道勢力を見ると、人道であるとか平和であるとか人権であるとかというところに力を入れている政党があると思いますので、その意味では我々も、あるいは公明党の皆さんも、そういう政策には力を入れてきた共通点があると思いますので、その上でしっかり綱領と政策ををまとめていきたいと思います」
公明の斉藤は同様の質問にこう答えた。
「これは人間の幸せが第一、人間の幸せより他にもっと大事なものがあるという考え方ではない、という人間中心主義です。また、別の言い方をすれば人間の生命、生活、生存を最大限尊重する考え方だと思います。また、分断と対立をエネルギーにする、そういう政治手法ではなく、色々な異なる意見を聞き、そして合意形成を図っていく、粘り強い対話で合意形成を図っていくそういう政治手法、これを私どもは中道主義、このように考えているところです。右と左の真ん中という意味ではなく、大きく包み込む包摂主義、共生社会、これを目指していくということも中道主義の一つの側面だと思います。こういう政治に共鳴する人たちを集めて、それが日本の政治の中心になるということが、私は日本の政治をこれから変えていく大きな力になると思っておりまして、今回その中道主義の塊を作っていく一歩だと、スタートだと思っております」
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