核武装地帯となれば破滅的なレベルにまで緊張が高まる中東
実際に、ロシアによる核使用の威嚇やウクライナ防衛に対して消極的なアメリカの姿勢を受け、フランスが、英国と協力して、欧州全域に核の傘を提供すべく、核戦力の増強を宣言していますし、中国も核戦力の拡充を加速させ、ロシアも最新鋭の核戦力の開発・配備に注力し、英国もジョンソン首相時代に宣言したように核戦力の拡充が行われています。
そしてトランプ米政権も核戦力のアップデートに取り組むことを宣言していることから、核保有国による軍拡が進んでいることが分かります。
ここにインドやパキスタンといった核兵器国(Nuclear States)や、NPT離脱中の北朝鮮、そして明らかにnuclear statesであるイスラエルなどが、挙って核戦力の拡大に走る動きに出ており、そこにイランが核開発能力を高めていると言われていることを合わせると、核軍拡のトレンドは深刻化していると言えるでしょう。
「核兵器を保有していることこそが、自国の安全保障に繋がる」というロジックが広がっています。
それに加え、以前から中東諸国が宣言しているように、サウジアラビア王国やUAEなどが核兵器開発と配備の必要性を強調し始めています。
すでにサウジアラビア王国とカタール、そしてUAEがパキスタンと相互防衛協定を締結していますが、明らかにはなっていないものの、これは一種のパキスタンによる核の傘の提供というように解釈されており、これまでの非核ゾーンとしての中東アラブ地域というステータスが崩れてきています。
実際、中東地域における核への傾倒は、噂段階の話に過ぎないと言い切りたいのですが、UAEがパキスタンによる核の傘の保証に加え、買ってくるのか作るのかは分かりませんが、自前での自衛のための核配備をも検討しているという情報が多方面から入ってきており、中東アラブ地域における核の緊張が高まっていることが分かります(ニューヨークでUAE代表団の友人やパキスタンの代表などと話した際、明確な答えは得られませんでしたが、代わりにただニヤリとしていました。それが何を意味するのかは謎です)。
地域の地図を見ると明らかですが、中東アラブ地域の隣には、イスラエルがありますし、また逆方面にはNATOの核がトルコの基地に配備されているというnuclear presenceがあることから、もし中東アラブ地域が核武装地帯になってしまったら、ただでさえ緊張が高い同地域において、破滅的なレベルにまで緊張が高まることもあり得ると懸念しています。
これはNPTの下、禁止しようとしている核兵器の拡散を意味します。
拡散により、核兵器のコントロール・管理が非常に困難になり、国際機関(国際社会)による協調の下での抑制が効きづらくなるだけでなく、非政府組織・テロリスト組織への核物質の流出などの危険性が格段に上がることを意味します。
そうなると、たまに映画やドラマで見る地獄のような状況が、近いうちに現実のものになる可能性が高まることを意味します。
以前より、複数の紛争がドミノ倒しのように連鎖して、世界大戦に発展する危険性について触れてきましたが、ここに明らかな核拡散が加わると、この“世界大戦”や戦争の連鎖は、想像がつかないほど危険を帯びることになると考えられます。
その観点からはイランによるウラン濃縮と核開発は、核拡散の危険性を高める可能性があるということから望ましくないと考えられ、イランに抑制を促し、要求することは理にかなっていると思われますが、それをアメリカや、自国も隠れて核兵器を保有するイスラエルが”正し、要求する“のはいかがなものかと感じます。
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