トランプとネタニヤフが開けたパンドラの箱。米国のイラン攻撃で高まる中東「核攻撃による緊張」

 

何が起きても不思議ではない状況下で考えられる最悪のシナリオ

ここに中国による台湾への侵攻が加われば紛争の波は東アジアにまで広がり、そしてそれが北朝鮮に飛び火すれば北東アジア地域にまで至ります。そして北東アジア地域といえば、そこには極東ロシアがあり、そしてそのまま東に進むと、なんとアメリカ大陸にまで繋がることになりかねない状況が生まれます。

これはもちろん(?!)最悪のシナリオであり、ここまでの事態が起きるとは考えづらい、または考えたくないのですが、実際に一寸先は闇ともいえる現在の国際情勢を目の当たりにしていると、何が起きても不思議ではない状況です。

まさに今週のニューヨークにおける国連外交の場は、事態のエスカレーションを前に、有効な抑止策が見当たらないというような重い空気に包まれているように感じます。

そのような中でNPT再検討会議は行われています。5月22日に閉会予定となっていますが、仮に合意文書の採択が見送られる事態になった場合、1970年にスタートした核兵器の不拡散の国際合意と協調体制は56年後に崩壊し、核兵器に対する無秩序な世界が表出するかも知れません。

またそれは核兵器禁止条約(TPNW)に込められた【核兵器の存在自体を違法とする・禁止する】という“究極目標達成への道”を閉ざすことにもなりかねず、核軍縮の機運が萎み、かつ核不拡散の枠組みが形骸化することで、核兵器こそが自衛手段との認識が拡がり、国家安全保障および国際安全保障の中心に核兵器が据えられる“真のNuclear Age”が訪れることになります。

核の平和利用としての原子力発電や核融合発電に代表されるエネルギーの安定供給や、X線などの医療への利用が広がるという意味でのNuclear Ageならば良いのですが、その波が軍事部門にまで拡がり、核兵器が軍備の中心を占めるような事態が生まれることで、核管理の難しさ・脆弱性への懸念が高まるのは避けたいところです。

これは今週、カーネギー財団およびCarnegie Endowment for International Peaceの会議において、What do we do for/to Cuba?とInternational Peace and Security in Nuclear Ageの議論にニューヨークから参加した際にも述べた内容にも繋がります(このコラムではCuba関連の会議での発言は掲載しておりません)。

実際に81年前、広島と長崎に投下されて甚大な人的犠牲とエコシステムへの大きなダメージを与えた原子爆弾による残虐な破壊と殺戮、そして今も消えることがない悲劇と苦しみの惨状を目の当たりにしつつ、今、私たちは広島と長崎に投下された原子爆弾の6万倍以上といわれる威力を持ち、人類のみならず地球さえも滅亡させかねない核兵器を引き続き製造して配備し続けています。

数の上での核軍縮は一時期進み、その数は世界で1万2,000発にまで減少しましたが、威力に換算すると核軍拡は進んでいます。

1962年10月から11月にかけて勃発したキューバミサイル危機の13日間は、核保有国米ソによる核の対峙の下、人類滅亡の一歩手前まで進んだという恐ろしい記憶を私たちに刻み込み、またカザフスタンやマーシャル諸島などで繰り返された核実験が人類に消えない傷を残したという現実があるにもかかわらず、それから60年以上たった今でも人類全体の自滅の危険性と隣り合わせの状況を続けて、今、世界を最悪の事態に導こうとしているのはどういうことなのでしょうか?

それを今一度、じっくりと考え、リーダーとして冷静な判断を下すことを強く願います。

会議がワシントンDCで開催されていたことを考えると、かなり踏み込んだ発言だと受け取られる恐れもありますが(ゆえにリモートで良かったなあと感じていました)、会議に出席していた超党派の議員や研究者からも賛同の意が示されたのは、皆がnuclear ageにおける人類が直面する極限の危機を意識しているのではないかと“前向きに”考える材料になるかと思います。

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