イランの核開発を加速させる結果となった米イスラエルの攻撃
ちなみにイランの場合、濃縮度60%超えの兵器レベルのウランを保有するとしても、殺害されたアリー・ハメネイ師による宗教禁止令(ファトワ)を通じた核兵器の開発と保有の禁止のような縛り・抑制が機能し、革命防衛隊が厳格に管理しているような体制下であればさほど懸念する必要はなかったのですが、アリー・ハメネイ師の死後、そのファトワの効力がどうであるかは知りませんが(一応、このファトワは現在も健在とのことですが)、この抑制の箍(たが)が外れるようなことがあれば、「核兵器があれば攻撃されることは無い」という方向に流れが変わり、イランによる核開発を加速させる危険性が生まれるのではないかという懸念が高まります(ちなみに同じロジックを持ち、国際社会からの非難をものともせず核開発を進めるのが北朝鮮です)。
そうなると、「イランによる核兵器開発を阻止する」ことを目的にしたアメリカとイスラエルの攻撃が、その意図に反して、イランが核兵器開発を加速させる方向に向かうとしたら、まさに笑えないジョークと言わざるを得ませんが、どうもその方向にことは進んでいるようです。
その例として挙げられるのが、今週、アラグチ外相(イラン)がモスクワを訪問し、クレムリンでプーチン大統領と長時間にわたる異例の協議を行っていますが、公になっている地域問題についての協議やエネルギー市場の安定についての協力という要素以外に、ロシアと北朝鮮の協力強化をモデルに、ロシアによるイランに対する核技術とノウハウのシェア、または核兵器の供給の可能性についても議題に上がったという情報があります。
「イスラエル、およびアメリカの脅威から身を守るためには核を持つしかない」という考えを、比較的穏健派とされ、バランスを重んじるアラグチ外相が信じるとは考えられないのですが、彼もかつて所属したイラン革命防衛隊の考えはどうもその方向に向かっているらしく、イランに対するグリップを強化する目的で、ロシアはその要請に応えるというような動きに出るかもしれません。
イランのもう一つの後ろ盾である中国については、イランに対して直接的な軍事技術、特に核兵器に関わるものを提供することは無いと思われますが、その代わり、イランがホルムズ海峡の通過をスムーズにすることを条件に、イランに対する経済的な支援を提供するべく、すでに締結されているイランと中国間の相互経済協力協定を適用して対応することになっているようです。
一応、中国としては「中国によるイランへの経済的な支援と協力が、イランの核開発に向けられることは無い」と主張していますが、実際にはどうなるかは分からないと考えるのが自然かと思います。
これまで中東アラブ諸国は「イランが核開発をするなら我々も」というロジックでイランの核開発を牽制してきましたが、今回、米・イスラエルによるイラン攻撃の最中、イスラエルまたはイランによる攻撃に晒されたことを受け、「イランとイスラエルの脅威に対抗するために核武装が必要だ」という方向に変わってきているようで、中東アラブ地域の核による緊張が現実味を帯びてきていることが覗えます。
中東アラブ地域が核による緊張の場になるとどうなるか?
東アフリカ地域から地中海を挟んでイスラエルとその周辺、アラブ諸国、イラン、トルコ、ロシア・ウクライナ、中央アジア地域(アゼルバイジャン・アルメニアを含む)およびスタン系の地域、インド・パキスタン、そして中国に至るまで戦争拡大の帯が生まれる場合の中心地になりかねません。
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