AI制御のドローンが作り出す核兵器を使いやすい行動心理
以前、核兵器について【人類が自ら生み出した最初で最後の自殺・自滅兵器】という表現をご紹介したかと思いますが、その開発が進められ、そしてその利用が脅しの手段として用いられる現状は、仮に核兵器が使用されるようなことがなかったとしても、非常に憂慮すべき事態です。
一発で相互確証破壊(MAD)が実現する戦略核兵器(長距離弾道ミサイルに核弾頭が搭載されているもの)が使われることはないと信じていますが(そうなると地球と人類の滅亡なので)、ロシアがウクライナへの侵攻後、繰り返し小型の核兵器である戦術核をウクライナおよびウクライナを支援する周辺国に使用する可能性を仄めかし、その脅しをより信憑性の高いものにするため、核使用のためのドクトリンまで改訂したことは、偶発的な衝突が起きた場合に“勢いで”核が使われかねない状況を生み出しています。
「仮に核兵器が使用された場合、それへの報復は核によるものか?通常兵器によるものか?」という、国際政治上の議論はさておき、核の使用は確実に核戦争に至るエスカレーションを招き、核戦争の連鎖を呼び込むことに繋がります。
そしてその危険性は、今回のアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃において、トランプ大統領がイランに対する核兵器の使用を検討したらしいという話と、イスラエルとイランが相互に“核施設”を攻撃したという事例の発生や、アラブ諸国における核保有論またはパキスタンによる核の傘の提供によって、さらに高まっていると認識しています。
以前、ロシアがウクライナへの核使用を仄めかした際にも触れたように、とても変な言い方ですが、「ロシアが核兵器を使わないことで、核兵器は使うことができない兵器であることを初めて証明できる」とお話ししましたが、今ではアメリカとイスラエルがイランを攻撃し、常に核兵器の使用がオプションに含まれている状況を見ると、その“証明”を行うことは不可能か非常に困難であると感じています。
最先端の技術では無人ドローンに超小型化された核弾頭が搭載でき、それがAI(人工知能)によって操縦できるレベルにまで達しているそうです。
自律殺傷兵器システム(LAWS)の議論でもお話ししましたが、AI制御のドローンが自爆攻撃で核兵器を用いるような事態になったら、人による最後の倫理的な判断の猶予がなくなり、それが最後の砦であるはずの罪の意識まで軽減または消滅させて、核兵器を使いやすい行動心理を作り出すのではないかと、真剣に懸念が広がっています。
この懸念はただの想像上のもの、つまりSFの世界の妄想でしょうか?それとも私たちの現実にすでに存在する“いまそこにある危機の姿”でしょうか?
その答えは皆さんに委ねますが、よく耳にする「それでも私たち人類は、ギリギリのところで踏みとどまり、いつも極限の危機を乗り越えてきた」という楽観論にどうしても乗れない私です。
NPT再検討会議が閉会する5月22日までに、もしかしたらまたニューヨークに来ることになるのかなあ…とため息をついています。
今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年5月1日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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