インフォメーションとインテリジェンス
実を申せば、私は2002年に早稲田大学で田原総一朗を座長に始まった全学部学生対象の「大隈塾」授業に参画し、その翌年から13年間、同塾の一般授業を履修した者の中から毎年数十名を選抜する高野ゼミを担当したが、そのゼミのテーマが「インテリジェンスの技法」だった。毎年、4月の第1回目の授業では次のようなことを語った。
▼まず考えてもらいたいのは、日本語では同じ「情報」という翻訳が付いてしまうが、インフォメーションとインテリジェンスの違いである。辞書で引くと、インフォメーションは情報、報道、受付、案内所などであるのに対し、インテリジェンスは知能、知性、理知などが前に出てくるが、情報も必ず訳語として加えられている。つまり、日本語ではこの両者の区別が付きにくい。
▼例えば米国の国家機関にCIAがあって、これはCentral Intelligence Agencyで、「中央情報局」と訳されるが、これは本当は「中央諜報局」と訳した方が実態に近い。逆にこの場合に英語では「Central Information Agency」と言うことは不可能である。さらに逆を言うと、駅やデパートの案内所、会社の玄関の受付などは、「はい、女性用のファッションは3階です」とか「トイレは2階のエスカレーターを上がって左に行った所です」とか、公開されている情報を要領よく伝えるだけなので、こういう場合に「Intelligence Center」と言うことは不可能である。
▼以上を概念的に分かりやすく整理すると、こうなると言って図を配布した。この左側から右側へと変換するプロセスがインテリジェンス作業であり、その成果物がインテリジェンスである。
インフォメーション → インテリジェンス
第1次情報 第2次情報
事実情報 意味情報
知識 知恵
物知り 決断
量(の多さ) 質(の高さ)
集める 捨てる
▼インフォメーションは「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって)」などの第1次的な事実情報であるのに対し、インテリジェンスは「だからどうしたんだ?」と問いかけ、それが社会にとって一体どういう意味があるのかを考えるよう促す意味情報である。インフォメーションをいくらたくさん集めても物知りにはなるけれども、それだけでは、例えば組織の運営に責任を持つリーダーが状況を判断して何事かを決断して物事を進めていく役には立たない。
▼そこで、インフォメーションは出来るだけ量をたくさん集める必要があるけれども、インテリジェンスの次元になるとむしろ大事なのは、それらを取捨選択し、優先順位を設定し、相互関連を見極めて立体的に組み立て直すといった知的操作を通じて質を高め、「そうか、肝心要はここか!」と煮詰めていくことである。それには我々ジャーナリストが日常使い慣れているいくつものテクニック(技法)があるので、その一端を伝授しよう。
――というのがゼミの趣旨だった。
この記事の著者・高野孟さんのメルマガ









