中東アラブ地域で破綻し崩壊したアメリカのプレゼンス
それに加えて、オバマ政権以降のアメリカが“世界の警察官”としての役割を放棄し始め、それがトランプ政権下において、グローバルバージョンのMAGA(アメリカの世界的覇権の回復を狙うもの)の迷走によって、アメリカが同盟国に庇護を与える“みかじめ料”システムが揺らいできたことも事実です。
例えば、これまで長年にわたり、年間、日本円にして数兆円規模の武器・兵器システムをアメリカから購入し続けてきたサウジアラビア王国は、アメリカ製の武器とアメリカ軍のプレゼンスこそがサウジアラビア王国に安全を保障すると信じ、かつ困ったらアメリカがサウジアラビア王国を守ってくれると考えていたにも関わらず、いざサウジアラビアが攻撃に晒されても何もしてくれなかったアメリカによる“裏切り”と“重大な契約違反”に直面したことを受け、実質的な統治者であるモハメッド・ビン・サルマン皇太子(MBS)を筆頭に、アメリカと距離を取り、中ロとの関係を改善し、場合によってはイランとの関係改善を進めてきたのは、戦後、長く続いてきた“みかじめ料システム(一種の保険契約のようなものと例えられるでしょうか)の破綻”の一例と言えます。
今年2月28日に米・イスラエルとイランとの戦争が始まり、イランとイスラエル双方からの攻撃がアラブ諸国に及ぶ中で行われたGCC(湾岸協力理事会)の緊急首脳・外相級会合において、サウジアラビアのファエサル外相などが「これまで米軍基地を自国内に置くことで、有事の際にアメリカ軍が我々を守ってくれると信じ込んできたが、イランからの攻撃に晒された時、アメリカ軍は我々を守ることは全くしなかった。我々はアメリカとの付き合い方を考え直さないといけない時に差し掛かっているのではないか」と相次いで非難し、実際にイランからの攻撃(その中にはイランの皮を被ったイスラエルによる攻撃も含まれるという情報多数あり)に晒され、大きな被害を受けた国々は「今後、イランへの攻撃のために自国領内にある米軍基地から攻撃機が飛び立つこと、および自国領空を米軍機が通過することを許可しない」という声明を発し、これまでのアメリカ依存の姿勢を急ぎ改め、自分たちの身は自分たちで守ることの必要性を宣言するに至っています。
またGCCの会合とは別の機会にMBS皇太子(サウジアラビア)は「アメリカによる投資を私たちは一度ストップし、全面的な見直しをしなくてはならない」と発言して、アメリカとの距離を取る姿勢を明確にし、この姿勢にはカタールやUAE、クウェイトなども追随し、中東アラブ諸国によるアメリカ離れが加速しています。
これは“アメリカは私たちを守らない”という何とも言えない苛立ちに加え、明らかにイスラエル寄りの姿勢を崩さず、同胞アラブ人・イスラム教徒に対するイスラエルの攻撃を黙認・容認するアメリカへの抗議も込められた動きであると考えますが、アメリカの中東アラブ地域におけるプレゼンスと制御が実質的に破綻・崩壊していることを示すものと考えます。
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ








