音声が「木下氏」であるか否かの言及を避けたい高市首相
質問通告が14人の議員から出され、それに対する答弁書を用意するのは、間違いなく大変だ。だが、そのための秘書官ではないか。手分けして質問項目を読めば、伊佐議員が求めているのは「木下秘書」の声であるかどうかの確認だけだとすぐにわかる。
高市首相がいちいち文春デジタルの会員になる必要はない。秘書官の誰かが初月度300円の会費を払ってとりあえずの会員登録をし、公開された音声を高市首相に聞いてもらえば、瞬時にそれが木下氏のものかどうか判断できるはずだ。
「音声の主」を問われているのに、高市首相はわざと「秘書官が会員になってそれを聞いて文字おこしをして私に伝えろという話だったんでしょうか」と、とぼけて見せる。ここで何も文字おこしをする手間は必要ない。音声を聞けば、それでカタが付く話だ。
伊佐議員は「なんなら、今わたしここに音声データを持ってますので、休憩して聞いてもらいたい」と当然の要求をしたが、坂本哲志委員長(自民)は、「ここで休憩なんてできない。テレビ中継をやっているし、中東関係の論議をしなければなりません」とそれを却下した。
要するに、高市首相は音声が「木下氏」であるかどうかに言及するのを避けたいのだ。「木下の声です」と認めたくもないし、「別人です」と嘘をつきたくもない。だから、理由にならない理由をこじつけているだけのことである。
いつものことだが、答えに窮すると、高市首相は凄みを利かせて開き直る。
「衆院選においてなにか私の事務所に違反行為があったという疑いをお持ちなのか。それを具体的に教えていただけましたら、私は誠実に答弁をいたします」
伊佐議員はそんなことを言っていない。高市事務所の公式な選挙活動の話ではなく、木下秘書が他陣営に不利になる動画の大量作成・拡散を松井氏に依頼したのではないかという疑惑について追及しているのだ。
結局、この日の衆院予算委では決着がつかず、質疑は翌日の参院予算委に持ち越された。問題の音声を前夜遅く確認したという高市首相は岸真紀子議員(立憲)に、こう答えた。
「内容は、広く国民の声を聴くためにはどうしたらいいかといったものでした。昨年12月の音声であり、総裁選で他候補を批判するものではありませんでした」
岸議員が、あいかわらず論点をすり替えようとする首相の姿勢にあきれた表情で「内容ではなく、公設秘書の声かどうかを聞いているんです」と再び質問すると、高市首相からようやくこんな答弁が返ってきた。
「秘書本人かどうか、あのような音声をもとに判断するのは難しい。途中で登場する“AIサナエ”は明らかに私の声ですが、私の発言や発音とは違います。秘書のものとされた音声も、私と会話している時より、かなり高い声でハキハキとしゃべっていたので、違和感がありました。いずれにしても、やりとりは他候補を批判するものでもなく、これはどう考えても確認のしようがありません」
20年も秘書として支えてくれた木下氏の声と同一であるかどうかを聞き分けるのが難しいという。文春はこれに対抗するため、音声の一部を急遽、無料公開した。YouTube上に残る木下氏の声と比較してみると、そんなに難しい判断だとは思えない。
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