トランプ米でもイスラエルでもイランでもない。なぜ中東情勢の“最重要プレイヤー”が「中国」なのか?

 

欧州やアジアにも直結していると見ていい「中東での変化」

そして私は、この中東で起こっているパワーバランスの変化が欧州やアジアにも直結していると見ています。なぜなら世界は今、“戦争の時代”に入ったのではなく、“戦争の形が変わる時代”に入ったからです。

しかし、いくら中東情勢が世界情勢の縮図だと言われても、中東だけを見ていては現在の世界は理解できません。

なぜなら、現在の世界秩序の変化を最も鮮明に映し出していると思われるのは、むしろロシア・ウクライナ戦争だからです。

私はこれまで多くの紛争地域を見てきた経験から言えることがあります。歴史的転換点では、誰もが過去の戦争を基準に未来を予測しようとします。しかし、未来は常に過去とは異なる形でやってきます。今、ウクライナで起きていることはまさにその典型です。

多くの軍事専門家が開戦当初に想定していた戦争は、これまでと同じく、戦車が進撃し、戦闘機が制空権を争い、大規模な機甲部隊が直接的に決戦を行う戦争でした。

しかし現実は、私たちが4年以上目撃しているように、それとは違いました。戦場の主役になったのは数億円の戦闘機やミサイルではなく、数万円から数十万円で製造できるドローンです。

しかも、それは単なる無人機ではなく、AI、通信技術、衛星情報、電子戦能力と結びついた巨大なシステムとして機能しています。このことにより、戦場の現実が大きく変わりました。

現在のウクライナ軍はロシア軍の兵士を直接攻撃するよりも、燃料施設や発電施設、補給拠点や鉄道網、そして通信網といったように“インフラ設備”を優先的に攻撃しています。

なぜでしょうか。ロシア・ウクライナ戦争の本質は、相手を殺傷することではなく、実は“相手の機能を奪うこと”を目的とした戦いになっているからと言えます。

例えば2014年にロシア軍が一方的に併合したクリミア半島で起きていることを見てみればそれが明らかですが、ウクライナ軍のドローン(空中と海上バージョン)によって橋が攻撃され、燃料施設が攻撃され、変電所が攻撃され、そして通信施設が攻撃されています。

それにより、ロシアの軍隊は物理的にクリミア半島に存在していても、一切機能しなくなります。つまり、兵士がいても移動できず、ミサイルがあっても発射できず、そして防空システムがあってもレーダーが動かない状況が生まれ、結果として戦争継続能力そのものが失われる事態に陥っています。

これは戦争の戦い方において極めて重要な変化です。20世紀の戦争は、一言で表現するならば、【領土の奪い合い】でした。21世紀に入ってからは、戦争の目的は【機能の奪い合い】へと変化していると言えます。

現在、ロシアとウクライナのみならず、イスラエルが周辺国に仕掛ける様々な戦いや、米・イスラエル・イラン間での戦争を理解するために、私は、今後の安全保障を考える際には、戦車や戦闘機の数だけを議論していては不十分だと考えています。

その代わり、本当に重要なのは、

「どれだけ効率的かつ確実に通信網を守れるか」

「どれだけ自らの命綱ともいえる電力網およびエネルギー供給網を守れるか」

「どれだけAIを効果的に、戦闘はもちろん、作戦立案から実行までの一連のオペレーションにおいて活用できるか」

そして【どれだけ相手の攻撃・防衛能力を破壊し、自らのオペレーション・システムを確実に守る電子戦能力を持つことができるか】といった能力です。

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