トランプ米でもイスラエルでもイランでもない。なぜ中東情勢の“最重要プレイヤー”が「中国」なのか?

 

戦場にいない国々が「変化」を最も熱心に学んでいる現状

そして、この変化を最も熱心に学んでいるのは、実は戦場にいない国々です。ロシアはウクライナで実戦経験を積み続けています。そこに北朝鮮は兵士を送り込み、最新の戦争を学ぶと同時に、兵士たちに実戦経験を積ませるとともに、ロシアに供与しているミサイルを実戦投入することで、その発射データの収集と、ロシアの知見を借りてその能力向上に励んでいます。

さらには、意外に感じるかもしれませんが、中国はロシアとの軍事交流を通じて戦訓を吸収し、互いに国軍を交流させることにより、学び合う体制を構築するとともに、相互に戦力の強化に勤しんでいます。

つまり、【ロシアが戦い、北朝鮮が実践を通じて戦い方を学び、そして中国が分析して、中ロ朝それぞれの軍事力強化に貢献する】というフィードバック・サイクルが形成されていますが、それは東アジアの安全保障環境も著しく変化させることを意味し、確実に日本にとって極めて重要な意味を持つことに繋がります。

北朝鮮はすでにドローン運用能力や電子戦能力を急速に向上させていますし、中国もまた、無人システムを中心とした新しい戦い方の構築を加速させています。

もし台湾海峡や朝鮮半島で有事が発生した場合、そこで展開される戦争は、私たちがこれまで想像してきた戦争とは全く異なるものになる可能性が高くなることが容易に予想できます。

その意味で、日本は今、大きな分岐点に立っています。幸い、日本には優れた技術があり、そして優れた人材もいます。しかし制度や発想はまだ過去の延長線上にあります。防衛産業とサイバー防衛、AI活用戦略とドローン運用、そして重要インフラ防護などを包括的にカバーするシステムの構築を国家戦略として統合して考える必要があります。そうでなければ、変化する戦争の速度に追いつけなくなるでしょう。

そして欧州各国もまた同じ結論に達しつつあります。先日のNATO首脳会議で示された防衛投資拡大の流れは、その象徴ですが、気を付けたいのは、これは単なる軍拡の動きではなく、ロシアとの対立が長期化するという現実を受け入れた結果と結論付けることが出来ます。

つまり欧州各国は、【(ロシアとウクライナが)停戦しても、安全保障の拡大競争は終わらない】という前提で動き始めています。マクロン大統領がずっと提唱してきた欧州独自の防衛軍構想もここにきて実現に向けた真剣な協議がスタートしましたし、フランスの“核の傘”を欧州全域に提供するための制度的な議論も急ピッチで進められています。

そして、10年前にBrexitでEUを離脱した英国も、特別な同盟国であるアメリカとの密月が変容し、英国を含めた拡大欧州地域の安全保障上の懸念が急速に高まるにつれ、EUへの復帰を推す声が国内で高まっているという情報も入ってきています(特にスターマー首相が辞任を表明してからは、その流れが加速しているように見えます)。

このことは中東にも共通しています。仮に米イラン間で一定の合意が成立したとしても、地域の競争が終わるわけではありません。イスラエルとイラン。サウジアラビアとイラン。トルコとイスラエル。イスラエルとヒズボラ(レバノンとシリア)といった競争・戦争は今後も続くことになるでしょう。

そしてそれら戦争・競争の背後で、中国とアメリカによる世界各地での対峙(特にアジア太平洋地域における対峙)は緊張度を増し、世界に200近くある国々がどちらかの陣営に絡めとられて、その結果、世界の分裂が固定化するような状況が生まれるのではないかと考えています。

だから私は現在の国際情勢を【戦争の時代】とは呼はず、むしろ、【秩序交渉の時代】と呼びたいと思います。

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