本質はそれほど変わらない国家間の紛争や人と人との争い
各国は戦場で戦っているように見えます。しかし実際には、戦いの先にある新しい秩序における主導権を巡って交渉していると見ています。
「中東では誰が地域秩序を主導するのか」
(イスラエルが生き残るのか?イランがアラブ諸国と手を組んで、イスラエルと対峙し、共同で主導するのか?それともかつてのように、よそ者である欧米諸国や中国・ロシアが乗り込んできて、中東地域・アラブを再び分割するという歴史を繰り返すのか?)
「欧州では誰が安全保障を担うのか」
(欧州各国は一致団結し、経済のみならず、外交・安全保障面でも統合を深め、一つのパワーハウスになるのか?それとも核兵器を持つ仏(および英国)が主導権を握り続けるのか?それとも、いろいろなフリクションを起こすことになりそうですが、ドイツがついに歴史の軛から解き放たれて、名実ともにパワーハウスの座にのぼり、欧州を纏めるのか?)
「アジアでは誰がルールを作るのか」
(中国がアジア太平洋地域を自らの覇権圏として制するのか?それともインドが中国の対抗軸となり、中印の主導権争いが激化するのか?日本がアジアの国々と共同でルール作りを行い、ルールに基づいた集団統治・管理システムをアジアに構築するのか?)
そして「世界全体では誰が次の国際秩序を設計するのか」
(アメリカが最強の国として君臨し続け、2位の国を、3位の国と組んで、追い落とす歴史が続くのか?それともロシアがついに復活し、かつてのような一大勢力圏を再興するのか?または米中ロの3本柱の国際秩序が生まれるのか?)
現在、世界全体で進行している争いの本質はそこにあるのではないでしょうか。
今回のコラムの最後に皆さんにお伝えしたいことがあります。
私は紛争調停という仕事を通じて、多くの対立の現場を見てきましたが、はっきりと言えることがあるとすれば、「国家間の紛争も、人と人との争いも、本質はそれほど変わらない」という現実です。
対立が激化すると、人は目の前の言葉や行動に囚われます。しかし本当に重要なのは、その背後にある不安や恐れ、そして利益です。
それは、今の世界も同じです。各国が発する強い言葉に目を奪われるのではなく、“なぜその言葉を発しているのか”“何を恐れているのか”そして“何を守ろうとしているのか”。
そこを見る必要があります。
ずっと続いているネタニエフ首相の強硬発言も、冒頭でもご紹介したエルドアン大統領(トルコ)の反発も、トランプ大統領が隠すことがない苛立った様子で発せられる極端な発言も、イランが米・イスラエルのみならず、世界各国に対して行う丁々発止の駆け引きも、そして中国が活発化させる仲介外交もの実施も、すべては次の秩序の中で有利な位置を確保するための交渉・駆け引きの一環なのです。
世界は今、戦争の時代に入ったのではありません。戦争の形が変わり、秩序を巡る交渉が新しい段階に入ったのです。そしてその交渉は、戦場よりも外交の場で、軍事力よりも影響力で、そして力の誇示よりも秩序設計能力によって勝敗が決まる時代へと向かっています。
いま私たちが注目すべきなのは、「誰が勝ったのか」ではありません(それは実際に勝ちが何を意味するのかが明確ではないからです)。
注目すべき対象は【誰が次の世界を設計しているのか】なのです。それこそが、この激動の時代を読み解き、迷子にならずに自らの進むべき道を見つける最大の鍵になると私は考えています。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年6月26日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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