麻生太郎の計略にまんまとはまってしまった維新の痛恨
もちろん維新は反発した。最も恐れていたことが起きてしまったのだ。こういうことにならないよう、7月1日の特別委員会で、野党欠席のなか、一気に採決にまで議事を進めてしまう算段だった。ところが、その日の午前中に森衆院議長が動いたことによって、自民党は採決を見送る口実ができ、維新はしぶしぶそれをのまざるをえなくなった。
維新の藤田文武共同代表が「法案審議の順番や日程を議長の影響力で差配することは正しいやり方なのか」と疑問を呈したが、時すでに遅し。麻生氏の計略にまんまとはまってしまった。森衆院議長、鈴木幹事長、山口議院運営委員長といった国会の主要メンバーを麻生派から配置した“高市包囲網”が威力を発揮したといってもいい。
維新の吉村代表の次の発言からも悲壮な危機感が伝わってくる。
「この国会において皇室典範の改正と副首都、定数削減、これは当然やり切るべきだと思います。有権者と約束したことでもあるし、自民党にとっても公約でしょ。やらないのなんて、ありえないですけどね。今国会で、閉じずにやり切る。そこにつきます」
やや陰りがみえるとはいえ依然として高い支持率を誇る高市首相。衆院選で大勝利に導いた自信から、一時は麻生氏の支配力を削ぐため衆院議長への就任を要請し「一強」体制の構築に突き進もうとした。しかし、麻生氏はむしろそれを逆手に取り、高市応援の大義名分を掲げる「国力研究会」なる議員グループを発足させて、党内支配力をさらに高めた。
いまや、高市首相に付き従う勢力は自民党内に少数しかなく、むしろ維新との関係が頼りというありさまだ。
皇室典範改正案を維新の二つの目玉法案より優先させるという麻生氏らの狙いは、「高市・維新」を軸とした権力構造に楔を打ち込むことにある。維新がそれを気に入らないのならさっさと連立から出ていけばいいと思っているのだ。
もともと、菅義偉氏と近しい関係を続けてきた維新に対して、麻生氏は好感を抱いていない。維新に譲歩する高市首相の姿勢が気に食わない麻生氏は「もう高市には協力できん」と周辺に不満を漏らしたと伝えられている。
周知のとおり、麻生氏はかねてから国民民主党を連立パートナーにしたいと考えてきた。維新が離れても、国民民主と組めば、参院も少数与党から脱し、政権は盤石になる。その国民民主は比例代表を45議席削減する定数削減法案を死活問題として反対し、副首都法案についても「特別市設置法案」という対案を出して一線を画しているのである。麻生氏にとって、維新の2法案は排除すべき障害でしかないだろう。
維新は麻生氏と自民党主流派の真意を悟り、皇室典範改正案の優先審議を容認する代わりに、定数削減法案と副首都法案も今国会で成立させることを確約するよう、「覚書」を要求した。だが、それに応じたら、野党がますます反発を強めるのは間違いない。
焦る吉村代表は7日、高市首相と会談した。直前まで「覚書」を自民党に要求していた維新だが、出てきた結果は真逆のものだった。高市首相は、とりわけ野党の反対が強い衆院議員定数削減法案の「今国会での成立」を諦め、先送りするよう吉村代表を説得、維新は泣く泣く合意したのだ。
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