累積赤字54億ドルから純利益48億ドルへ。中国半導体メーカーが演じた鮮やかな大逆転劇

 

世界第4の勢力への躍進

実際、ここにきて中国半導体メーカーの好調は数字にもはっきりと表れ始めた。

先述したCXMTに加え、中国には長江存儲科技(YMTC)という代表的半導体メモリのメーカーがある。

現在、2つの中国メーカーは世界市場で韓国のサムスン、SKハイニックス、そしてアメリカのマイクロンに次ぐ第4の勢力と位置付けられている。

半導体メモリは大別してDRAMとNANDに分かれるが、今年第1四半期のNANDの世界シェアはYMTCがシェアを13%にまで伸ばし、サムスン、SKハイニックスに次ぐ第三勢力として米マイクロンと肩を並べた。

YMTCの世界シェアは昨年同期比の8%から13%へと躍進した。

またDRAM市場ではCXMTがシェア8%で、やはり4番目につけた。ちなみにDRAM市場のシェアの内訳はサムスンが38%、SKハイニックスが29%、マイクロンが22%とトップスリーの強さが目立っている。

赤字続きからの鮮やかな逆転

注目すべきは、現在の半導体メモリの不足がCXMTの財務状況を激変させているという事実だ。

FTは記事の中で、〈同社の新規株式公開(IPO)目論見書によると、今年第1四半期の純利益は330億元(約48億ドル)に急増。これは、過去10年間に積み上げてきた370億元(約54億ドル)の累積赤字からの鮮やかな逆転劇〉だと表現している。

記事で「逆転」という言葉が使われたのは、CXMTが〈過去10年近くにわたり数10億ドルを燃やし尽くしてきた(=赤字を積み上げてきたという意味)〉ことがあるからだ。

アメリカから半導体を遮断されるという危機感から、同社には中国政府から巨額の補助金が投入されてきた。たとえ赤字を垂れ流しても国産半導体は維持しなければならなかったためだが、今それが巨額の利益を生む企業へと変貌しつつあるというのだから、確かに「大逆転」だ。

前述したように同社が準備しているIPOでは、同社を支援してきた地方政府である合肥市に〈1兆元以上の利益がもたらされることになり、それは同市の年間GDPにほぼ匹敵する額〉(同FT)だというから笑いが止まらないだろう。

もちろん現段階で本当にアップルが、CXMTやYMTCから半導体メモリを調達できるようになるか否かは定かではない。ただアップルがiPhoneを値上げすれば米経済への影響は小さくない。またアップルが中国製半導体に食指を伸ばさなければならないほど需給がひっ迫したメモリ市場では、中国製に対する追い風が吹き続けることはほぼ間違いないのだろう。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年7月12日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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