トランプ「弱さの露呈」か「合理的な判断」か?米国がイランへの大規模攻撃を見送った理由

 

2.海峡封鎖という切り札─イランが握る経済的レバレッジ

この戦争の帰趨を占う上で、避けて通れないのがホルムズ海峡です。

イランは、この海峡を通航する商船からの通航料徴収という構えを崩していません。これが実行に移されるようなことになれば、イランは数十億ドル規模の収入を手にするだけでなく、世界のエネルギー供給を事実上左右する力を握ることになります。

これこそ、イランが持つ最大のレバレッジだと私は見ています。

交渉学でいうレバレッジとは、「相手に対して行使しうる影響力」を意味しますが、その中でも一番強力なのは、相手にとって代替不可能な資源やルートを支配することです。

イランにとってホルムズ海峡は、まさに「相手にとって代替不可能な資源」です。世界のエネルギー供給の相当割合がここを通過する以上、イランがこの海峡を掌握し続ける限り、米国がどれだけ軍事的圧力をかけても根本的な解決には至りません。

実際、米国はイラン産原油輸送を狙った港湾封鎖 ─ いわゆる「鋼鉄の壁」作戦 ─ を継続・強化しています。CENTCOMによれば、7月29日時点で商船20隻の航路変更、2隻の航行不能化、2隻の臨検を実施したとのことですが、ただ、これはあくまで対症療法に過ぎないと言わざるを得ません。

正直なところ、海峡そのものの安全な通航を回復できなければ、原油市場の不安は解消されず、世界のサプライチェーンの不安も解決されないことは明らかです。

では米国は具体的に何をしなくてはならないのでしょうか。

米国の退役軍人であるバリー・マキャフリー元陸軍大将は、SNS上で「ホルムズ海峡封鎖を解くための地上戦には、少なくとも何万人もの兵力が必要となり、終結には1年以上を要する可能性がある」との見解を示しています。

トランプ政権は今のところ地上部隊の投入には慎重ですが、空爆だけでは解決できないという現実が、政権内でもじわじわ共有されつつあるようです。簡単な答えは、実はどこにもないのです。

さらに気になるのは、イランの軍事力そのものが進化するスピードです。

米国の戦略立案者たちは、ロシアや中国からの技術支援も相まって、イランが数年以内により高精度で長射程の兵器を保有する可能性が高いと分析しています。そうなれば、イスラエル南部ディモナの原子炉や、イランから4,000キロメートル離れたディエゴガルシア島の米軍基地までもが射程圏内に入ることになります。遠く離れた「アメリカの権益」もイランの攻撃対象になり得るということで、パワーバランスが大きく変わることを意味します。

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