4.核の影 ─ モジタバ・ハメネイ師という新たな不確定要素
ここで注視しておきたいのが、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師を巡る分析です。
米情報機関の分析によれば、モジタバ・ハメネイ師は父である故アリー・ハメネイ師よりも核兵器開発に強い関心を示しているとされています。米・イラン戦闘開始前の発言や傍受された会話をもとに、モジタバ師が将来的に小型化し長距離ミサイルに搭載可能な核兵器の開発に関心を持っているという米情報機関による分析を、「The New York Times」が報じました。
私は、これはかなり重い情報だと受け止めています。
前指導者のアリー・ハメネイ師は生前、ファトワ(宗教見解)によって核兵器の保有と開発を明確に禁じていました。この宗教的な禁忌は、イランの核政策における一つの歯止めとして機能してきたわけです。
モジタバ師は、3月に最高指導者に就任して以来、核兵器開発を目指すと公の場で宣言したことは一度もないものの、この禁忌がどこまで継承されるのかは、彼がまだ表舞台に姿を現して民衆に直に語り掛けたことがない状況下では、依然として不透明です。
米情報機関によれば、現時点でイランが核開発を再開する具体的な動きは確認されていないとのことですが、トランプ政権は地下施設に隠されていると言われている濃縮ウランの動向や、ロシアからの核技術供与の有無、弾道ミサイルへの核弾頭搭載の可否など、かなり神経を尖らせている様子です。
そうした中、アメリカ政府はイランの脅威が高まる中で、体制転換構想を再び議論のテーブルに戻しているとも報じられています。2月28日の攻撃開始当初は、軍事攻撃をきっかけに民衆が蜂起することが期待されていましたが、実際には反米感情の高まりの方が目立ちました。外部からの軍事的圧力が、必ずしも体制の脆弱化に直結しない ─ 歴史が繰り返し示してきた教訓そのものです。
体制転換の手段として今有力視されているのは、対イラン経済制裁の強化です。数か月以内にイランの石油収入の大半を絶ち、深刻な経済危機を引き起こして民衆蜂起を誘発するというシナリオや、かつてイスラエルが試みたように国内のクルド人勢力に武器を供与して国内反乱を起こさせるという案も浮上しています。
ただ、どちらも成功の確証はありません。むしろ戦争がこのまま泥沼化していく可能性の方が高いというのが、私の率直な見立てです。
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