高市早苗が「公約を守る首相」を演じ続けるため、ただそれだけ。税率1%策が背負わされた“極めて政治的”な役割

 

自民党の選挙公約を実行するための舞台となった国民会議

昨年10月21日、首相に就任した高市氏はこの流れを引き継ぎ、所信表明演説でこう述べた。

超党派かつ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論してまいります。

当時まだ少数与党だった国会を乗り切るために野党を政策決定の場に巻き込んでいくという狙いが高市首相の頭にあった。その後の総選挙で消費減税を掲げて圧勝したことから、それは人気維持のために実行せねばならない政策となったが、最大の壁は財政健全化を金科玉条とする財務省の存在だった。

そこで高市首相は消費減税を給付付き税額控除までの“つなぎ”と位置づけ、あえて財務省の“器”である国民会議で議論することを選択した。こうして国民会議は自民党の選挙公約を実行するための舞台となった。

実務者会議の議長に就いた小野寺五典氏は議論百出するであろう各党の意見をまとめ、めざす「2年限定ゼロ税率」の結論に導く役割を高市首相に託されていた。言うまでもなく、小野寺氏は、「ラスボス」と呼ばれた財務省出身の宮沢洋一氏に代わって党税調の会長をつとめる高市首相の“忠臣”だ。

会議をコントロールしやすいよう参政党やれいわ新選組、共産党など「消費税廃止」「大幅減税」を叫ぶ勢力を最初から排除し、中道改革連合、公明党、立憲民主党、国民民主党、チームみらい、日本保守党を招き入れてスタートしたが、シナリオ通りに実務者会議が進む道理はなかった。

「恒久的に食料品の消費税ゼロ」(中道、日本保守党)、「消費税は一律5%」(国民民主)、「消費税率は据え置き」(チームみらい)などと、もともと各党の考えはバラバラ。

しかも、積極財政政策を打ち出して高市首相が就任して以来、株価上昇とは裏腹に大幅な円安と物価高に見舞われ、消費税を引き下げても効果は薄いという見方が専門家の間でも強まってきた。

さまざまな意見が飛び交い、収拾がつかない中、小野寺氏は「議長案」なるものを各党に提示した。

令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となる飲食料品の消費税率を1%とする。1%相当分の範囲内で、所得に連動したきめ細やかな給付を令和9年度に導入し食料品の消費税率を「実質ゼロ化」する。

税率を「ゼロ」にできないのはレジが対応できず改修に1年かかるという理由。「1%」なら半年ですむという。高市首相は当初、この案に乗り気ではなかったが、その1%分を中低所得者に給付することで「実質ゼロになります」と政府・与党の幹部から説明を受け、ようやく納得したという。

しかし、野党からは「全く議論していない中身だ」と反発の声が上がり、消費税引き下げより、即効性のある「低・中所得者向けの現金給付」を優先すべきだとの声が噴出した。

消費税が景気を冷やす元凶であるのは周知のとおりだ。だが、それを撤廃したり恒久的に減税するのではなく、2年間限定というのは始末が悪い。「1%」を実行するのに必要な財源は5兆円といわれ、それを2年続けたら10兆円もかかってしまう。10兆円を一律で全国民に給付すれば、一人当たり8万円余りになる。4人家族なら32万円を超える。家計はうるおい、景気上昇に寄与するだろう。

ところが、このインフレ下の消費税減税だと、原材料費や人件費の高騰を理由に、企業は価格を容易に下げないだろうし、物価高への不安の先立つ人々が消費を増やすとは思えない。むしろ、スーパーで食材、総菜、弁当を買って家で食べる動きが助長され、飲食店、外食産業はますます苦しくなる。

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